花宵ロマネスクU(仮)〜キミと仰ぎ見る明けの明星〜

□釣鐘の形の花。
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ふと辺りを見渡すとその人は小径(こみち)のかたわらにしゃがんでいた。

ハイキングコースとはいえちょっとした山歩き、何か足でもひねったのだろうか。

「…どうかしましたか?」

パッと振り返る顔はいたっていつもと同じでとくに痛がるふうでもない。

「ああ、この花を見ていたんです」

……花?

言われて彼女の指し示すところを見る。


ひと目見てその花が何なのか分かった。

「桔梗、ですね」
青紫色の釣鐘形の花は少々特徴的だ、だから見間違えはしない。

流石ですね、と彼女は屈託なく笑いかける。

歩き始めてから小一時間、うっすらと汗をかいていたが、爽やかな秋風がとても心地よい。
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