花宵ロマネスク〜面影思ふ宵闇〜

□スウィートキャンディ
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 いつの間にか握られた飴をじっと見ながら尚も躊躇してると
「時間が無い」
とたった一言投げ掛けられる。
 さっさとしろ、という心の声さえ聞こえそうな不機嫌そうな様子に負け渋々包み紙から飴玉を取り出し人差し指と親指で摘む。

「今度だけ、だからね」

一言添えながらそっと綾芽君の口元にその小振りな飴玉を運ぶ。綾芽君は何も言わず唇を開きわずかに舌を出し受け入れる。
 何だか恥ずかしくてまともに綾芽君の目は見れなかったためどんな表情で受け取ったかまでは分からなかった。

〜終わった

と、気を緩めた瞬間。右手首を掴まれ、人差し指にややひんやりした唇の感触がした。

キ ス ?!

思わず硬直してしまう。
 ハッと気付けば人差し指を中心として右手指全体が綾芽君の舌で舐め尽くされていた。

「ちょっ、ちょっと!あ、綾芽君!」
慌てて手を離し抗議する。
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