天泣の調べ

□花は摘み取られはしない
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女神像の中に入っていけば、其処は空洞音が響くほど広い空間があり、その中心部分には本来ファイが宿っているマスターソードが刺さっているべき石碑が役目を果たせぬ姿であった。
その先を見れば荷鳥色の宝珠が埋め込まれている石版が輝いていた。
【マイマスター、アレをご覧ください。あの石版は勇者が歩む道を記したものです。
記された場所に行けばまた、新たな手掛かりが有る確率90%
持ち帰ることを推奨します】
「これって持って帰っても大丈夫なんだ」
腰に付いているポーチに石版を入れ、トライフォースの手掛かりを手に入れたので次の目標に移行するのだが…あまり気が乗らないリンク。
「人とあんまり関わりたくないから高い所から捜しても良い?」
【それでしたら、マスターソードの能力であるダウジングを利用してみて下さい。
目標物等を設定すれば、その物を捜す事が可能です】
便利ーっと感心し、早速その機能を使おうとダウジングで設定したばかりの
『捜査物』に反応する。それも…かなり大きく強い反応。

「其処にいるのは、もしかしてリンク…?」

【マスター後ろですっ!!】
ファイと2人きりしか居ない空間に第3者の声が響き、ファイの言葉で後ろを振り返れば長い金色の髪に水底を現すかのように深い青色の瞳をした少女が女神像の入り口に佇んでおり、此方をリンクを見ている。
「リンク、やっぱり、リンクなのね?…無事だったのね!!」
見る見る目に涙を溜め、少女は走り出しリンクの元へと駆け寄り抱きつく
嬉しそうに泣き出す少女は何処か見覚えがある。特徴ある髪飾りに、ノイズが走る記憶から僅かながらも感じ取れば紡ぐ言葉。
「…ぜ、るだ?」
おぼろげに不確かな名前を挙げれば、少女・ゼルダは大きくハッキリと頷く。
ゼルダはリンクが大地に落ちるまで共に居た幼馴染だが、今リンクの手に
握られているマスターソードはダウジング中で、その対象は『女神の魂を持つ者』
それに反応するゼルダは。
【マスターリンク。この方がそうである確率98%】
ファイの言葉はリンクの中にあったピースの欠片を一致させ予想した事が確定した。
「そっか…ゼルダが、ね」
ギラヒムから頼まれた事が案外早く終わって仕舞った事を知る。抱き着いていたゼルダは体を離し。
「リンク、こんな所に居ないでお父様の所に帰りましょう。皆驚くわ」
「ゼルダ…僕が帰る場所は君の所じゃ無い。ファイ、『帰ろう』」
【イエス、マイマスター】
静かに様子を見ていたファイをマスターソードに戻し女神像から出て行こうとするリンクを引き止めようと彼の袖を引っ張るゼルダ。
「待ってよ、リンク。貴方は『帰って来た』じゃない、もう何処にも行く必要は無いわ」
「…違うよ。僕はこの島に探し物を見つけに来ただけ、帰る所は君の所じゃない」
中々離してくれないゼルダに困り果てるリンク。
彼女を単純に切り離す事は至極全うに簡単なのだが女神の魂を持つ器を傷つけるのは、どうしても避けたい。
かと言って、なるべく騒ぎを起こさず大地に帰る方法が見つからず助けを呼ぼうとファイを呼べば、更に拘束は強まり挙句に質問攻めがっ待っているであろうと悩んでいると頭の中にファイの声が響く。
【“マスターリンク、ファイがゼルダ様の気を引きます。その間に脱出する事を推奨します”】
リンクの精神に直接話しかけてきたファイの言葉に頷きつつも、剣の精霊はこんなことも出来るのかと思わず感心してしまった。そして彼女が言葉通りに現れたと同時に力の限り走り出すリンク。
先程まで居なかったが突如現れた、ゼルダにとって第3者であるファイに気を取られリンクの袖を掴んでいた手の力が弱まり、衣の擦れる音を立て宙を舞う。
その音はリンクが走り出すと同時であった。
「待って!!リンク」
ゼルダは叫ぶが、その声に一切傾けずに女神像から出る。
そして、ダイビングが出来る場所まで足を止めなかった。





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