天泣の調べ

□突然現れてこその
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衣に付いた埃や砂を払い落として立ち上がるとリンクに金色に輝くハープを手渡されハープを眺めていると…
「それは『女神のハープ』って呼ばれている神器なの。リンクの旅に役立つと思うわ」
「使い方は封印の神殿にいる老婆に聞くといい。」
「分かった。それでゼルダ達はこれから何処に行くの?」
ハープをポーチに入れ、次の行き先を聞くリンク。2人の行き先が分かればギラヒムが先回り出来るっと心底で考えていると思わぬ答えが返ってきた。
「私達、これからずっと昔の時代に行くの。女神ハイリアっとしての記憶を取り戻さないといけないから…」
《終焉の者を消し去るために》
その言葉は砂漠に居る事も忘れてしまうかのように、一気に体の奥底から冷える。
彼女と暫く関わっていたからか忘れかけていた事実を思い出す。
ゼルダの目的は自分と真逆なんだと痛感されられ嫌悪感が胸を占める。
「僕も頑張るよ」
(君の中にある女神の存在ごと封印できるように)
そう呟いても風により空虚に消える。最後の言葉を聞き取れずに首を傾げるゼルダに笑みを浮かべ
「お互い頑張ろう、ゼルダ」
「ええ。リンクも頑張って」
インパと共に時の扉の中に入って行き、光が一点に収縮し淡い光を中に舞い上がらせ姿を消す。再び静寂を取り戻した砂漠は酷く冷たく感じたのか、寂しい思いに埋もれてしまいそうで足早にフィローネの森に帰るリンク。
その道中でふと、ある考えが彼の頭を過ったようで口を開く。
「ねぇ…ファイ。ファイは消えないよね?女神を封印した後とかに」
【ファイはマスターが契約完了の意を示さなければ、何時までも一緒です】
「ギラヒムも大丈夫だよね?」
【本体である魔剣が無事であれば、後はファイと同じです。使用目的は違えど同じ神器である事は揺るぎ無い事実です。】
ラネール砂漠は予想以上にリンクの心を揺らしたのであろう。人に忘れられ長い悠久にして久遠のときは全てを風化させ砂に埋められる。その光景が心優しい彼を悲しませたのであろう。
ファイは心の中で呟く。
(どうして、こう云う時にこそ自分の対は居ないのだろう)


そんな彼に代わってフィローネの森に着いた後、約一時間ほどキュイ族と遊んだのは内緒である。
「キュイ族って可愛いよねー、もふもふしてさ」
【満足されたのであれば良かったです。】
ラネール砂漠で見せた悲しそうな表情をしていた人物とは思えないほど緩みきった笑顔を浮かべるリンク。彼が良いのであれば、何でも良いっと割り切ったファイ。
気分良く封印の神殿に向かっていると…空から野太い声が響く。あまりにも煩いので空を見上げるとスカイロフトから落ちて来たのか声の主はバドであった。
「エ!?…ちょっと、まさか」
頭は理解し次の行動が分かるのだが、体が動く前にバドは落ちて来る事は
必然的に結果は決まっている…ならせめてもの行動を起こしてから空からの衝撃に耐えることにした。
【マスター、大丈夫ですか?】
「痛い…けど、ファイが無事なら平気。」
咄嗟にマスターソードをお腹に抱え、バドが落ちてくる部分を背中になるように体を捻ったリンク。マスターソードこそは無事だったものの背中から聞こえる何かが軋む音は防げない。
「うぉぉぉぉぉぉお!!なんだ、此処!?木がいっぱい有りやがるし鳥が小せえーーー!!」
周囲を見渡し叫ぶ彼の視野にファイが映ると又もや叫ぶ。
「だ、だ、誰だテメエ!?」
【…その場から退く事を強く求めます、今すぐに】
ファイの言葉が一瞬理解できなかったが、自分の下を覗くと黒と緑の布に時折聞こえる呻き声に気付くと速攻で移動するバド。
「大地に人間が居たのかーーー!?」
「…空から落ちて来たって言うのに元気だね。僕も人の事言えないけど。」
クッション材もとい下敷きにしてしまった人物がリンクだと分かり一安心したバドだったが、それは自分が本当に大地へと来てしまった事を実感させるには十分だった。
静かになったバドを気にしつつも自分の目的の為に歩き出すリンク。
「お、おい!!何処に行くつもりなんだよ、リンク」
「僕達以外の人が居るところ」
ハープの使い方を教えてもらうと同時にバドをあの老人に押し付け…任せようと考え封印の神殿の中へと入る。老婆も一瞬リンク以外のハイリア人の存在に驚いたものの直ぐに平常心を取り戻したかのようにハープの使い方と詠を教えた。
【マイマスターに報告。女神のハープをホーリーアゲハが集まる所で奏でてください。
其処で女神様が定めし試練を行います】
「試練って何?」
「行けば分かる。話すよりも早い…」
女神の試練っという名前だけでも嫌気が差すのに、老婆の雰囲気からして面倒な事に違いないようで、露骨に話を変えるリンク。
「それでバドはどうするの?ゼルダは此処には居ないし、森にはモンスター居るよ」
「勿論、オレはここに居るぜ。分からん事が在れば婆さんに聞けば良いしな」
この大地で生きていけるか少々不安もあるが、何故か此処はモンスターは来ない。
此処ならば安全だろう。ただ1つ…魔王復活の邪魔になるようであれば迷わず消す事は変わらない。思わぬ乱入者を背にフィローネの森に行くリンクであった。




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