天泣の調べ

□可愛い子ほど甘やかせ
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トライフォースを集める前に又もや、『詩』を集めなければならない。
天空に居るナイシャと三龍から『勇者の詩』を教わなければ、トライフォースが封じられている場に入ることが出来ないと言われた。
「女神の詩の次は勇者の詩かー…むむむっ」
【ナイシャ様が言われていた三龍は精霊フィローネ・オルディン・ラネールの三人である確率95%】
三度、森・火山・砂漠を巡る事となった事態にロフトバードの背中で泣くしかない。
そんなマスターにせめてもの思いで最初は森か火山を選ぶように推奨したファイ。
森は地理的にも安心し、場所も近く行きやすい。火山は女神から授かった耐熱リングが体に感じる火や熱を封じることを伝えられ頭を悩ませたが…ふと気付く。
「あれ、ラネールが最初とか駄目なの?面倒な所から順にとか…」
【マスターの体調を配慮し、ラネールが最初ですと他の詩集めに支障が出る確率75%】
「びょ、病弱じゃないもん!!」
しかし面倒・・・もとい大変なところから終わらせていくのはモチベーションの変化も少ないであろうと、最初にオルディン火山へと向かうことになった。

そう、向かったまでは良かった。…まさかオルディン火山が突然噴火をするなど知らなかっただけである。
「痛たたた・・・。空から落とされるとか本当に泣きたい」
空から落ちた時に頭をぶつけたのか、暫く気絶していたようで周囲を見渡すと何体かのゴブリンが心配して様子を伺っているようで翻訳を頼もうと背中に有るファイに話し掛けた時、背中が以上に軽い。背中だけではない、腰に付けているポーチも異様に軽い…

まるで『中身が無い』かのように。

「えっ、嘘!?…ファイが居ない、アイテムも無い…泣いても良いよね?」
「キッーー」
唯一魔剣が残っていた事がリンクの心を支えたが今すぐにも折れそうである。
ゴブリンとの会話はファイが居ないため申し訳ないが一方的になってしまう
「泣いていたら魔王様に怒られちゃうし・・・ねぇ、アイテム一緒に探してくれる?」
不安の色を隠せないままゴブリンに聞くと彼にも分かり易く意思を伝えようと大きく頷くゴブリンに感謝するリンク。
「キキッーーー!!」
言葉は分からないが自分を励ましてくれている事は痛いほど伝わり目頭が熱くなる。
袖で荒くソレを拭い力強く歩き出す。
リンクがゴブリンと共にアイテムの回収に奔走していると同時刻、ゴブリンの情報網は広く速い。直ぐにギラヒムの耳へと届いた。
「リンクが噴火に巻き込まれてアイテムと聖剣を落とした?…つくづく災難だねぇ」
これも女神の試練というならば彼女は余程、勇者をイジめるのが好きなんだろうと笑うギラヒム。思春期な子供にありがちな『好きな子ほどイジめてしまう』タイプであろう。
あぁ…今世に生まれた女神の器である巫女は丁度、その年頃だったと思えば納得してしまった。
「ダメだねぇ、リンクほど可愛い子は甘やかさないと…。優しくすればするほど愛らしさが生まれ懸命に答えようとしてくれる。それが良いじゃないか」
全く分かっていないと、古の時代に逃げた女神に対して口を押さえ嘲笑う。
「キッーーー」
「どうするかって?勿論、助けに行くさ。時の扉が何処に在るかを聞きに行くという名目でね。」
ゴブリンは了解したと頷き、他の同族に情報の共有に行ったのを見送ると自分もオルディン火山へと向かうため、姿を消すギラヒムであった。

突然現れたギラヒムに驚いたリンクであったが、思わぬ協力者に喜び落としたアイテム全てを回収しファイも取り戻す事が出来たのであった。その間に交わされた会話は女神側にとって不利な事ばかりであったとしても。

【申し訳御座いません、マイマスター。一時的とはいえ御身から離れてしまった事を】
「ファイが無事ならそれで十分だよ。有難うね、ギラヒム」
「ワタシの方がお礼を言いたいぐらいだね、リンク。アイテム回収はソレの報酬にすらならないからネ」
「では、精霊オルディンから詩を教わりに行く事を推奨します。」
「じゃあまたね、ギラヒム」
紅から蒼へ。魔族から勇者へと戻り、詩を教わるために旅を再開する。







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