捧
□兄弟喧嘩もほどほどに
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そして花火大会当日。
「やっぱり寒ぃなぁー」
冷たい手を擦り合わせては息を吹きかけていた
「手袋ぐらいしてくれば良かったじゃない」
「出掛けてから思い出したんだよ」
ワザと忘れたのか、本当に忘れたのかは分からないけど兄さんは何かを期待しているようだった
「全く・・・。はい」
「な、なんだよ」
「あれ?手繋ぎたかったんじゃないの?」
クスクスと笑いながら手を差し出すと素直にだけど照れくさそうに手を繋ぐ
「うるせぇよ」
「素直じゃないね」
人混みに紛れながら繋いだ手は温かくてお互いの気持ちが分かってしまいそうだった
会場に近付くにつれて人もかなり多くなり、屋台も見えて来ると兄さんがそわそわし始める
「なぁなぁ屋台見て来ようぜ!」
子供のような瞳で見つめながら僕の手をぐいぐいと引っ張って歩いていく
「そんなに急がなくても大丈夫だっ・・・っ!」
「雪男!」
繋いでいた手はいつの間にか離れて人混みに流されてしまうと抜け出すだけでも一苦労だった
人の少ない場所へ移動し、携帯を取り出して兄さんへと電話をするが人が多いために繋がらない
「あのバカ!」
とりあえず行きそうな場所を探して歩くがなかなか見つけられずにイライラするばかり
ある程度探し回ると再び携帯を取り出すと丁度兄さんからの着信。
「兄さん、今どこにいるの!?」
「悪ぃ!偶然勝呂達に─・・・」
言葉を遮るように打ち上げられる花火、突然切れてしまう電話。
次々と夜空に打ち上げられる花火を見上げ探すのが馬鹿らしくなり寮へと帰ることにした