青の祓魔師

スクールデビールライフ 3話 悪魔だって神に祈ることもあるんだゼ☆え?俺だけ?
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ギィイイ…

教室のドアを開けると、そこはなんとまぁ、お世辞にも綺麗とは言えない所だった。



3話 悪魔だって神に祈ることもあるんだゼ☆え?俺だけ?



廃墟かここは。
廊下とレベルが違いすぎるだろ。

「にーしーろーなな…」

さて、どこに座ろうかな、なんて思ってたら
ちょうどいい感じで男子が固まっている席が。

おぉ、あのトサカ頭の子、受け顔だ。

ツカツカ歩き出して、三人の方へ向かう。

「「「……」」」

三人がじっと俺を見ている。

真ん中の列の前から3列目、つまりトサカ君の隣の席まで行って
ドサッとカバンを置いて、

「ここ、座ってもいいよな?」

とだけ訊いて座った。

そりゃあもう相手の口が開く前に座ったからね。
返事聞く気さらっさらないからね。

「お、おぉ…」

はっとした顔でトサカ君が答えた。

「サンキュ。
俺、ゴンベエ。よろしくな」

友達作りは第一印象が大事。
無難な挨拶をして、三人に笑顔を向けた。

「あ、あぁ、俺は勝呂 竜士や。
よろしゅうな」
「志摩 廉造や、よろしゅう」
「三輪 子猫丸です」

三人は律儀に握手までしてくれた。
予想通り、トサカ…勝呂の手はでかくて萌えた。
おまっ、俺を悶え殺す気か!

「3人とも変わった言葉遣いだな」
「あぁ、俺ら京都モンやねんから」

志摩が勝呂と三輪を見ながら言った。

「きょうと?」

首を傾げながら繰り返すと、

「もしかして、京都知らへんのですか?」

目を丸くしながら三輪が訊いてきた。

「ゴンベエは日本人やなさそうやからしゃあないわ、子猫」
「子猫?」

勝呂のセリフに俺は更に首を捻った。
どこに猫がいるんだ?

「子猫さん…この人のことどすわー。
子猫丸って名前やし、猫好きやからなぁ」
「そうなのか、俺も子猫って呼んでもいいか?」
「えぇですよ」

はにかんで笑う子猫丸。
やべぇ!!子猫癒しだ!!
すんげぇ癒されるんだけど!?

「ついでだから勝呂も名前で呼ぶ!」
「あ?まぁ、別にかまへんけど…」
「あれ?俺は?
流れ的に俺も名前で呼んでくれはるんやろ?」
「え、いや志摩は志摩」
「何で!?」

んー、なんていうか、志摩は苗字の方がしっくりくるんだよなー。



***


ギィィ…

俺が京都組と盛り上がっていると、教室のドアが開いた。

「…あ」

そこには今朝会ったばかりの双子兄、燐。
と、足元に一頭の犬。
何だあの犬。
ここペットお断りとかねぇのかな?

まぁいいや。

そう思って竜士たちと向き合うと、うおっ、恐ッ!
竜士めっちゃ燐にガン飛ばしてるし。

「竜士、恐いぞ?」
「生まれつきなんやからしゃあないやろ」
「そっか、それはしょーがない」

うんうん頷きながら前に向き直る。
俺の2列前の席に燐が座るのが見えた。
あ、燐、教卓の目の前に座るんだ。偉いなー。

「すくな…!」

燐がそう呟くのが聞こえた。
うん、確かに俺入れて9人だもんな。

「はーい静かに」

ガチャ、とドアを開けて先生がやってきた。
ついに俺も祓魔師かー。
やっぱ変な感じだな。

「席について下さい。
授業を始めます」

あれ?アイツ、雪男じゃね?

やってきたのは今朝会ったばかりの双子弟、雪男。

「はじめまして。
対・悪魔薬学を教える奥村 雪男です」

うわー、やっぱり雪男かよ。

「ゆきお????やっぱり!?」
「はい、雪男です」

燐、お前どんだけビビってんだ…って当たり前か。
まさか双子の弟が祓魔師だったなんて、すぐには信じられないよな。

「どうしましたか?」

驚きまくる燐に対し、雪男は落ち着いている。

「や…どど、どうしましたかじゃねーだろ!
お前がどうしましたの!?」
「僕はどうもしてませんよ。
授業中なので静かにして下さいね」
「????」

「お察しのとおり、僕は皆さんと同い年の新任講師です。
…ですが悪魔祓い(エクソシズム)に関しては僕が二年先輩ですから
塾では便宜上"先生"と呼んでくださいね」

にこっと笑って雪男が言う。
それから、

「まず、まだ魔障にかかった事のない人はどの位いますか?
手を上げて」

と言った。
竜士が手を上げるのが視界の端に入った。

「三人ですね。
では最初の授業は"魔障の儀式"から始めましょう」

魔障かぁ。
確か、悪魔から受ける傷や病のことだったっけ。
一度でも"魔障"を受けると悪魔を見ることができるから
祓魔師になる奴は初めに必ず通んなきゃいけないんだよな。
俺悪魔だから関係ないけど。

「実はこの教室、普段は使われていません」

だからこんなに汚いのか…って、少しは掃除ぐらいしろよ。

「鬼(ゴブリン)族という悪魔の巣になっています」
「え!?だ…大丈夫なんですか…?」

女の子組の一人が小さく手を上げながら雪男に訊いた。

「大丈夫です。
鬼の類は人のいる明るい場所には通常現れません。
イタズラ程度の魔力しか持たない下級悪魔なので…」

そこまで言って、雪男は机の上に置いてあったカバンを開けた。

「人が扱い易い悪魔なんです」

そしてカバンから何かが入った試験管を取り出す。

「しかし動物の腐った血の臭いを嗅ぐと、興奮して狂暴化してしまう」

あのドロッとしたやつ…、動物の血なのか。

「今回は鬼族の好物の牛乳で血を割って…、
10分の1に薄めたものを一滴たらして数匹の鬼を誘き出し…
儀式を手伝ってもらいます」

生態を知るにもいい機会なので…。
そう言いながらドン、と机の上に牛乳を置く雪男。

「皆さんは僕が準備するまで少し待っていてください」

そしてそのままビーカーに牛乳を入れ始めた。

「竜士は魔障受けたことないんだな」
「あぁ。そういうゴンベエはあるんやな」
「あー、うん、まぁ、うん」

やっば、なんて誤魔化せばいいんだ…!

「なんや、覚えとらんのかい」
「そっ、そうそう!
物心つく前に受けたらしいんだ!」

おぉ、グッジョブ俺!
なんて妥当な答えなんだ!!

「そら、いろいろ大変やったやろうなぁ」

いいえまったく。
全然苦労とかしてないからね。
むしろ悪魔はお友達だゼ☆的なアレだったからね。

「あははh「ふざけんな!」

笑って答えようとしていたら燐の怒鳴り声が教室に響いた。
何?何かあったの?

きょろきょろ周りを見回すと、燐が雪男に怒鳴ったということが分かった。

「さっきも言ったけど…」

それでも雪男は顔色を変えず、作業を続けている。

「僕が祓魔師になったのは二年前。
訓練は七歳の頃から始めた。
…僕は生まれた時に兄さんから魔障を受けて…、物心つく前から悪魔がずっと視えてたんだ」


「…ずっと知ってたよ。
知らなかったのは兄さんだけだ」


後ろからじゃ見えないけど、きっと燐は傷付いた顔をしてるんだろうな。

「…そこどいてくれる?」
「……。
……じゃあ…、なんで俺に言わねーんだ!!!!」
「!」

燐が雪男の腕を勢いよく掴んだ。

ガチャンッ!

「あ」

試験管、床に落ちちゃった。

「ぶわっ、くっさ!?」
「……」
「なんだこの臭い…!
エっ!?」

思わず鼻を覆いたくなるような臭いが教室中に広まった。

「来る…」

慣れ親しんだ気配を感じるのと同時に、
聞き覚えのある唸り声が微かに耳に届いてきた。

バガッ!

「うわぁ!!」
「!?」

天井が勢いよく壊れた。

あ、子鬼(ホブゴブリン)だ。

「悪魔!」

髪を二つに結んだ女の子が子鬼を指して叫んだ。

「え、どこ!?」

竜士が慌てたように言った。
視えないってこういうとき怖いな。

「そこ!!」

「グルルルルアァッ!!」

「あ…」
「子鬼だ…!」

女の子に襲い掛かろうとする子鬼たち。
でも。

「きゃあッ」

雪男の銃弾によってやられてしまった。

「教室の外に避難して!」

次々と現れてくる子鬼たちから目を離さず、雪男が叫んだ。
それを聞いてみんな駆け足で教室から出る。

「ゴンベエッ!
何してんのや!はよ逃げなッ!!」
「うおっ!?」

ぼけーっと突っ立ってみんなの流れを見ていたら、誰かに腕を引っ張られた。

「って、竜士!?」
「お前死にたいんか!!」
「いや、そんなことはないけど」

ていうか、この俺が下級悪魔なんかにやられるわけないでしょ。

そのまま竜士に引っ張られて教室の外へ。

「ザコだが数が多い上に完全に凶暴化させてしまいました。
すみません、僕のミスです。まだ新任なもので…」

雪男がドアの前に立って言った。

「申し訳ありませんが…、僕が駆除し終えるまで外で待機していてください。
奥村君も早く……」

教室の中に入って、雪男が燐にも外に出るよう促したとき。

バンッ

ドアを閉められた。

「きゃっ」
「!!」

オイオイ…。
なんつー勝手な奴だ。

「まぁ子鬼だし、大丈夫だろ」

じっとドアを見つめて呟いた。

「ゴンベエ…」
「あ?…竜士か」

後ろから呼ばれ、振り向くとそこには竜士がいた。
その後ろには志摩と子猫丸。

「あぁそうだ。
引っ張ってくれて、ありがとな」
「えっ?あ、あぁ、それは別にえぇねん。
…ところでお前、子鬼らが来る前、『来る…』って言ったやろ?
何で分かったんや?」
「あー、アレかぁ」

そういや、俺まだ"祓魔訓練生(ペイジ)"だっつー設定だから、気配を感じた、なんて言ったら怪しまれるに決まってる。

「うん、アレは、うん、まぁ…聞こえたんだよ!」
「「「聞こえた?」」」
「そうそう!
アイツらの唸り声がさ!」
「へぇ、ゴンベエくんって耳がえぇんですね」
「あははは、そうか?」

子猫丸に褒められて、正直言うと嬉しかった。
褒められたの、初めてじゃね?

ガチャ

あ、終わったんだ、子鬼駆除。

「すみませんでした皆さん。
別の教室で授業再開します
奥村君も!」
「…はーい先生!」


***


「あーそっか。
今日から寮になるんだっけ」

入学する前は楽しみだったけど、今はそんな気分じゃない。

「どうするんだよ、同じ部屋の人が超恐い人だったら」

恐くて夜眠れねーよ。

あーあ、家帰りてぇ。

ガチャ…

俺の家になる部屋のドアを恐る恐る開けて、中にいる人間を見る。

前言撤回。
カミサマ、アンタは悪魔の俺にも優しさを与えてくれるんだな!

「「ゴンベエ!!」」
「ゴンベエくん!」



死んでも家には帰らねぇ。

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