△重婚不可▼

□3人+1匹の生活、の始まり
1ページ/7ページ

そんなこんなで、連れてこられた
イッシュ・ライモンの住宅街

一際 目立って聳え立つマンションに唖然としたが、招き入れられたその室内には言葉を失う他なかった

広いのだ

馬鹿みたいに広く、そして綺麗なのだ

3人で住むと言っても、無駄なスペースは沢山ある

恐らく2人が仕事に行っている間は、1人でここで帰りを待たなければならないのだろうが

こうも広くては落ち着かない


「サキト、サキト
ここに座って!ボクの隣!」

「いいえ、サキト様
どうぞワタクシの膝の上に!」

『あ、結構です』


ウェルカムムード全開の2人を軽くあしらい、サキトは正面のソファに座った

肌触りが心地良く、やんわりとサキトの身を優しく包み込む

このソファでお昼寝したら、どんなに気持ち良いだろう、と

表情を強張らせたままの2人の視線を無視して、ほのぼの想像する


「でも嬉しいなぁ
これからずっと、サキトと一緒!」

「そうですね
なんて幸せな事でしょう」

『…どうも…』


何だか気恥ずかしかった

サキトが思っている以上に、2人は歓迎と感激をしている

ジョウトからイッシュへ移動している間もずっと、2人はサキトの名を呼んでは何かと気を遣っていた

その姿は構ってもらいたいヨーテリーの子供のようでもあり、微笑ましい

そうしてサキトの不安や警戒心は、少しづつ解けていった


「サキト、喉 渇いてない?
お腹空いてない?」

「紅茶を淹れましょう
お夜食は如何ですか?」

「何でも言って!
ノボリが何でも作ってくれる
その間にボクとお喋りしよ?」

「何でも作って差し上げます
ワタクシはそこの包丁も握れぬ体たらくとは違いますので」

「何、ノボリ
ボクとサキトの邪魔しないで」

「貴方こそ邪魔ですよ、クダリ
ゴミ出しにでも行って来なさい」


突如として室内に殺気が満ちる

片方は口角を上げたまま
もう片方は口角を下げたまま
無言の睨み合いと牽制のし合いが繰り広げられた

そんな中


『水、貰いますねー』


勝手に冷蔵庫からミネラルウォーターを拝借し、サキトは我が道を突き進んでいた

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ