漆黒の月、緑の未確認生物
□居候
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一護と秋は互いに向かい合うようにソファーに座ると、一護は頭を下げた。
「はじめまして。黒崎一護といいます。すいません、勝手に上がらせて頂いて…」
苦手な敬語を話す一護に秋は苦笑いをした。
「そんな堅くならなくていいわよ。私は日向秋。先程は夏美とケロちゃんがお世話になったと聞いたわ。何より助けてくれてありがとう」
一護は軽く笑った。そして夏美とケロロに見せた手紙を秋に見せた。
「実は…俺は任務でこちらに来ているのです。このあたりで化け物…虚が出現していると報告が入ったからその調査と虚の滅却をしなければならないんです。
しかし、宿が何処にも見当たらない…」
一護の言葉を遮るように秋は言った。
「此処に泊めて欲しい…と」
一護は頷き、頭を下げた。
「大変迷惑だと分かっている!しかし…」
またもや、秋は一護の言葉を遮って言った。
「問題ないわよ。ようこそ、日向家へ!よろしく、一護くん」
何と、軽々しく了承してしまった秋に一護はぽかんとした。
「ほんとにいいのか…?」
あたふたしながら言う一護に秋はふと笑顔を浮かべた。
「実はこの家は父親がいないの。…不慮の事故で死んでしまったのよ…でも一護くんみたいなしっかり者の男性がいるとまるで家族に父親が存在しているみたいでこっちも嬉しいのよ。」
秋は自分より遥かに背が高い一護を抱きしめる。
そして、こう続けた。
「私は仕事で殆ど家にはいないから、一護くんにこの家を護って欲しいな」
一護は11年ぶりの母親の温もりに浸っていた。
「ああ…」
一護も腕を回し、秋を抱きしめ返した。