封印された初恋〈カカイル〉

□桜封印された初恋三章
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それから十数年、
年月が流れた・・・



カカシは生きて相変わらず任務に飛び回っていた。

今では、木の葉の里でも優秀なトップクラス上忍で、火影の爺さんに便利に使われている。


幼いころカカシは、
まるで戦う人形のようだったが、いつの頃からか不器用で少々グレてはいたが、人間らしい表現をするようになった。


カカシの変化を周りの者も気づいて、親しい上忍仲間も出来て、
今では昔の面影もなく、飄々としたうさん臭い色男に育ったいた。

色男と言っても、猫背で口布と額あてで片目しか見えてないカカシは、
見るからに怪しい男になっていた。


それでもカカシの行く末を心配していた火影を十分喜ばせ安心させた。


ここ数年は、暗部の仕事以外で下忍担当教師なども頼んだが、カカシのお眼鏡に適う者が無く、

今は暗部の短期任務とSランクの任務などを忙しくこなしていた。


相変わらず里内でも極秘に動いているため、
殆どの人間がカカシの名は有名だが、姿を詳しく知る者はいない。

例え会っても、カカシだと気づかないだろう。


また今年の春も、火影の爺さんがカカシを呼びつけた。

カカシは下忍の選抜教師をすることで、こうして火影の部屋に呼ばれている。


「カカシ、来たか」


「ほ〜い、
来ましたよ。


火影さま、

今年も、下忍教師を頼むんですか?

オレには、
教師なんてむいてないですよ。


あきらめませんか?

いい加減。」


ポケットに手を入れ身体を猫背に曲げて、やる気が無いように天井を向いた。


「そう言うでない、
カカシ。


今年は、どうしてもお主に受け持ってもらいたい生徒がおるのじゃ。


これが、その三人のリストじゃ。」


火影は三枚のリストを、カカシに渡した。


カカシはリストの名を見て、驚いた。


「・・・これは!」


「春野サクラ、

うちはサスケ、

うずまきナルト、

春野サクラは問題がない、
じゃが、

うちはサスケは、

あの悲劇の一族うちは唯一の生き残り、
少々情緒不安定でな、


それよりも問題は、

うずまきナルトじゃ

カカシも知ってのおるじゃろう、
四代目が九尾を封印した子じゃ、
このナルトをカカシ

お主に、頼みたい。


ナルトは、九尾を封印された事で大人たちから、
忌み嫌われておる子供じゃ。

お主にとって九尾は敵たが、
ナルト自身は、四代目の忘れ方見であろう、

だから、ナルトに敵意を持たず導き育てる師になって欲しい・・・、


しかし・・


何かあった時、

対応出来る者でなければならん。

もし万が一、
封印が解ける事があれば、ナルトを殺さなくてはならん・・・


今回の役目が出来るのはカカシ、・・・


お主しか、
おらんのじゃ・・

引き受けてくれぬか、

カカシ・・・」


火影はカカシをジッと見つめて、
答えを待った。


「仕方ありませんねぇ〜、
オレしか居ないんでしょう。

やれるだけやってみますよ」


「すまぬカカシ、

その時は、
また辛い役目を任せるが、

許してくれ。」


すまなそうに頭を下げる火影に、カカシが言った。


「やめて下さいよ、
三代目、

封印が解けると決まった訳じゃないですから、

大丈夫、
何とかなりますよ。

オレ、優秀だから」


手にしたリストをヒラヒラ振りながら扉を出ていった。


火影の部屋から出てから、カカシは真っ直ぐ慰霊碑に向った。

慰霊碑の前で改めて思う。

今回の役目が自分に回ってきたのは、九尾との因縁なのか・・

それとも、四代目との絆なのか・・・


自分のような、
人間出来てない奴が、四代目と同じように正しく道を教えることが出来るのだろうか。


「四代目、オビト、

どうしょう・・・

今までで、
一番難しい任務かも


オレ、殺すの得意だけど、

生かすのは不得意だからねぇ〜、

まいったなぁ〜・、



まぁ、
三人が合格すればの話なんだけどさ。」


そう言うと、貰った資料をパラパラと捲った。


うずまきナルト、
金色の髪に青い瞳、

なんともおマヌケ顔の脳天気なガキが写っていた。


「どんなガキだろうね?
ナルトは、
見るからにクソガキ、

本当に九尾は入っているねかねぇ〜・

・・・・・えっ!?
!!!!・・・・」


見ていたナルトの書類の一番下に、担任教師の名前と印が入っていた。



「海野 イルカ 」



カカシは知らない忍だが、

うみの、と言う名なら
知っている。


カカシには、忘れることが出来ない初恋の少年の名だ。


遠い昔、

ここで出会った少年は、カカシに熱い思いをくれた。


一時は、ただの憧れだと思っていたが、大人になった 今、

あれは間違いなくカカシの
初恋だったと思う。


あれほど純粋に熱く、
恋い焦がれた人は、
いまだにいないのだ。


今でも思い出すと、胸の中に甘い痛みが広がる。

少年の桜の結晶は、
カカシの幸運のお守りとなって、
今でも肌身に離さず大事に持っている。


あの少年に会っていなければ、今の自分は、ここにいないだろう。

少年が作った桜の結晶は、どんなピンチの時でもカカシに生きて里に帰ることを、思い出させてくれた。


少年の生きている里に、
もう一度、
帰りたい

と、カカシを生かしてくれたのだ。


少年とは、あれから一度も会った事はない。

里のどこかで、変わらず笑っているだろうと・・

そういて欲しいと


願う日々を送ってきた。

「・うみ・の・・

・イルカ・・」


こんなところで、
うみの と言う名が出てくるとは、思ってもいなかった。


この海野イルカが、その少年だとは決まっていないが、

そうだったら良いとも、困るとも言えた。


憧れて恋い焦がれ
出来ればもう一度会いたいと何度も思った。

しかし、

自分みたいに危険で汚い奴に、関わらせるのが嫌だった。

それに、少年自身が変っていたら、どうしょう
と、怖くて探すこともしなかった。


何時まで心の中で、
宝物を抱くように恋をしていたかったからだ。


カカシの胸の鼓動は、

期待と不安に満ちて早まっていく。


「はははぁ・・・

・・まいった、


シャレにならないじゃんかよぉ〜・・ 」


早鐘を打つ胸を押さえながら、
情けない笑みを浮かべて呟く。


「本当、今回は

問題満載ぃ〜!



オレにどうしろって言うのなねぇ〜、

あのクソ爺ぃ!」


火影に八つ当たりをしながら、

カカシの初恋は、
まだまだ続いていて


カカシを熱く捕らえて離さないでいる事実を愚問の中

自覚した。





数日後


よいよ下忍候補の三人と会う日が来た。



なかなか三人の待っている教室に足が向かず、

随分遅れて教室の前に立った。


教室の扉の上に黒板消しが挟まれ、みえみえのイタズラが仕掛けられている。


「なんだかなぁ〜」


教室の中では、ナルトとサクラの声が響いていた。

なかなか来ない教師に、ちょっとしたイタズラなのだろう。

待たせたお詫びに、
ご期待に答えて、引っ掛かってやることにした。


ポフゥ!



カカシの頭に白い粉がついて、黒板消しが落ちた。


「ぎゃはははは〜」


イタズラの張本人のナルトが、馬鹿ウケして大笑いしている。

サクラは謝りながらも、内心大ウケしていた。

サスケは、呆れ顔でカカシを観察している。


ちょっと構って三人の反応を見るのも良いと思ったが、
ここまで脳天気に笑われると、三人の先行き、

どう、生かすか…

真剣に思い悩んでいる自分が、哀れになってくる。

わざと引っ掛かっておいて何だが、
ちょっとした仕返しに三人にこう言った。



「んぅ〜・・


なんて言うかなぁ〜

お前らの第一印象は


まあ〜、
嫌いだ。 」



言われた三人の落ち込む姿に、内心ほくそ笑む。

何と素直な反応だろう。

ナルト、サクラは
分かるが、サスケまでこんなに素直に表現出来るとは、
良い傾向だった。


三人を連れて、場所を変え自己紹介をするよう言うと、
ナルトがまずカカシに自己紹介を求めた。


「あ〜オレか?

オレは、
はたけカカシ
て名前だ。


好き嫌いをお前達に教える気はない、
将来の夢って言われてもなぁ〜・・

趣味は、
まぁ、いろいろだ」


名前しか分からない怪しい上忍師に、ブチブチ言いながらも、カカシに言われてナルトが自己紹介を始めた。


「俺さ、俺さ、

名前は、
うずまきナルト、

好きな物は
カップラーメン

もっと好きな物は、
イルカ先生に奢ってもらった一楽のラーメン

嫌いな物は、
お湯を入れてからの3分間、

趣味はカップラーメン食べくらべ。

将来の夢は、
火影を越す、
でもって里の奴ら全員に、
俺の存在を認めさせてやるんだ」


元気よく語るナルトの言葉に、イルカの名前が出てカカシをドッキリとさせた。


熱く将来を語るナルトの笑う顔が、過去の少年の姿がダブった。

ナルトは里の大人達から疎外され、精神面でかなりの傷を受けて来たはずなのに、壊れることも、歪むこともなく、
悲しみや辛さを乗り越えて健全に育っていた。


九尾の器として、あの状況で、こんなガキになるのが不思議だった。



なるほど、
面白い成長したな。



次はサクラが紹介を始める。

サクラは終始、サスケを見つめていた。

この年頃の子は、
やっぱり恋愛かなぁ、

・・普通


まぁ、
恋も使いよう。

生き残るためのエネルギーには、良いかもしれない、

思いが人を強くする事もあるからね。


今度はサスケだ。

サスケは強く一族の復興と敵をとる事を告げた。


両親を殺した肉親、

一族の敵が自分の兄では、流石に暗い影はまだまだ消えてはいない。

しかし、あれほどの悲劇を目にして、それでも立ち向かうことが出来る強さが見えた。

ナルトに比べて、
精神面が不安定だが、
それが解決されれば、かなり優秀だ。


もしかして、ナルト、サスケをここまでにしたのは、この子達の担任
海野イルカと言う人間なのかも知れない。


カカシの壊れかけた人間性を直し、
暖かい心を感じさせてくれた人・・


あの人がもし、この子達の担任だとしたら、あれほど孤独なナルトが、こんなに真っ直ぐ素直に育つわけも、

サスケが過去の暗い記憶に囚われながら立ち向かうわけも、納得できた。
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