封印された初恋〈カカイル〉

□桜封印された初恋四章
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「おい、

お〜い、

イルカ、イルカ」


ぼーとしているイル
カに同僚が声をかけ
た。


「ぇ、あっ!
わるい、

なんだ?」


「どうしたんだ、

イルカ、


ぼーっとしてさ、
お前、最近変だぞ、


悩み事か?

恋の相談なら何時で
ものるぞ。」


「えっ・ええっ!
違うよ!、

何でもないんだ、
たいした事じゃない
から、

すまん、
気にしないでくれ」


「そうか?

最近、ぼーとして
心、ここに在らずて
感じだぞ。」


「えっ!?
何言ってるんだ!

少し寝不足なだけだ
よ、

最近いろいろ忙しい
だろう、


それより、何だ、」


「あっ!そうそう、

火影様が呼んでたぞ
手伝ってくれって」


書類をピラピラさせ
ながら同僚は、ここ
は引き継ぐからと行
って良いぞと、

イルカに言った。


「わかった、
後を頼む。」


軽く手を上げ、席を
立った。


最近のイルカは少し
おかしいのだ。


仕事中も少し空いた
時間があると、あの
夜のカカシが思い浮
かんでしまう。


桜と悲しく笑う
カカシの顔が・・・


見惚れるぐらい綺麗
な男の顔なのに、

どこか切ない幼子の
姿がイルカを捕らえ
て離さない。


同僚から恋煩いか、
などと、とんでもな
い誤解すらされてし
まうほど、自分でも
おかしいのは分かっ
ていた。


「ヤバイよなぁ〜、

どうしたんだ俺、


重症だよ・・」


上忍のカカシを捕ま
えて、こんな事を他
人に相談をする訳に
もいかず、

本人にどう言えば良いのか分からないし、

それよりあの後で、
何回かカカシ先生と
は、受付で顔を合わ
せたが、

相変わらず掴み所がない微笑みを浮かべ、

最低限の会話しか
出来なかった。


あの日の様に、
仲良く会話出来れば、
何か掴めるかも知れ
ないが、

チャンスが無いまま
イルカの中でグルグル
と考えてしまう日々が
続いている。



イルカとしては、
カカシ先生の事を少
しでも理解して、

及ばずながら力にな
れる事があれば嬉し
い。



何よりあんな切ない
顔で笑うのを見てい
ると、

自分のほうが辛くて
嫌だった。


人から甘いと言われ
ようとお節介と言わ
れようと、

辛そうな人を見つけて
見ないふりなど出来な
いのが、

イルカのイルカらしい
ところだ。


カカシ先生は何か辛
い事に懸命に耐えて
いるに違いない。


噂で聞いたが、
あんなに若い時に
暗部にいたのだ、


自分が想像もつかな
い過酷な体験を沢山
してきたのだろう。


カカシ先生について
の恐い噂も沢山聞い
た。


どんな人だと聞くと
凄い強い忍で、幾つ
もの恐怖の逸話が残
るほどの恐ろしい人
だと言われている。


しかし、詳しい人柄
も、何もかもが謎の
人だと、

個人的な情報は、
女性にはモテるが親し
く付合う人は居なくて、
友人関係も特定の人と
仲良くしている様子は
無い。


なんとも怪しい感じ
がして、軽い口調も
何処までが本気なの
か分からなくて、イ
ルカも散々イライラ
させられた。


しかし、

花見の日以来、

違った印象をイルカ
は感じていた。


素顔のカカシは口布
で隠してしまうのが
勿体ないくらい美男子
で、うさん臭いと言う
言葉など似合わない
容姿をしていた。


素顔でいれば、今より
更に違った意味で、
さぞかし女性に騒がれ
ていただろう。


内面はシャイで変に
不器用なだけで、
優しい人、

切ない顔で笑う、
悲しい人、


イルカはそう感じて
いた。



カカシの本当の笑顔
が見たい。


きっと、綺麗で優し
い顔で笑うのだろう
とイルカは思ってい
た。


火影様のいる部屋に
向かいながらもイル
カの思考はカカシの
ことに囚われていた


「失礼します。」


軽い声を響かせて
ドアを開けると、
火影様が一人椅子
に座っていた。


「おお、イルカ
呼び出してすまんの
ぉ〜、


忍の依頼割り当てと
依頼の整理を頼みた
いのだが大丈夫か」


「はい、大丈夫です

・・他の方は、
まだですか?」


部屋に自分たち以外
来ていないのが気に
なって聞いた。


カカシの事を火影様
に聞いてみようか、
とイルカは考えたか
らだ。


「依頼の受付が遅れ
ているらしいと連絡
が入った。

二十分ほど遅れると
言っておったわ。」


「そうですか、

・・・あの・・


火影様・・

あっ、えっと・・」


いつものイルカらし
くなく、言いよどむ態
度に火影は顔を曇らせた。


「どうしたイルカ、

何かトラブルでもあ
ったか?」


「いえ、

そんな心配はありま
せんが・・・

私的なことで伺いた
いことがありまして
・・・」


イルカが仕事以外で
火影を頼って来るな
ど、今までに一回も
無かった事だ。


「珍しいのぉ〜、

イルカがわしに私的
な相談ごととは、


好きな相手でも出来
たか?

わしで良ければ、
何でも聞くがよい。


イルカに頼まれるの
は嬉しいからのう。

奥手なイルカにも、
やっと春がきたか」


とニコニコと嬉しそ
うに言うのだ。


同僚といい火影様と
いい、

なんでそっち系に勘違い
してくれるんだ・・・。


その度にドギマギし
てしまう。

焦るイルカを更に同
僚などは楽しんでい
た。


「ちっ、違いますよ

火影様まで何を言われるんですか!」


「違うのか?・・

わしの勘も鈍ったか
のう〜、

そんな顔で改まって
私的なことなどと言
うので、

てっきりそうかと思
ったが・・

残念じゃ。」


ガッカリして火影様
は、イルカに改めて聞
いた。


「あの・・・
私が伺いたいのは、

カカシ・・上忍の
ことで・その・・」


イルカから出た名前
に、まだナルト達の
事が心配なのか、と
火影は考えた。


「カカシの指導で何
か気になることでも
あったか?

イルカ、」


「いっ、いえ、
とんでもない、

そうじゃなくて・
・・ええっ〜と」


「イルカは心配症じ
ゃな、

ナルト達は大丈夫
じゃよ、

あれはアレなりに良くやっておる。

心配するでない。」


「ナルト達は良いん
です。

カカシ先生は良い
先生だと思います。

子供達も懐いていま
すし、心配はしてま
せん。・・・」


イルカの答えに火影
は首を傾げた。


「では、なんじゃ?

わしに聞きたいと言
うのは、

思い当たる事は無い
がなぁ〜?」


とイルカに笑った。


「それは・・・

あの・・

カカシ・・先生
自身の事を・・・

教えて・・
頂きたいのですが、

私的な理由なので
支障がない程度で
かまいません、


お願いします。


む・無理なら仕方な
いですが・・」


イルカの深刻そうな顔を見て、火影は笑みをスゥーと消して小さなため息をついた。


「イルカよ、

お前はカカシに何を
感じた。」


火影はイルカに問い
掛けた。


「分かりません、

私には・・・


カカシ先生は、
優秀な上忍だと思い
ます。

生徒を正しく指導出
来る、素晴らしい
先生です。


ナルトの事も公平に
扱ってくれますし、
優しい誠実な方だと
感じました。


ただ・・

私の気のせいかも知
れませんが、

なんと言いますか・
・・


上手く掴めないので
すが・・

辛そうに・・・
みえてしまって・・


笑顔が・・
時たま見せる笑顔が
見ていてなんだか、
凄く寂しい顔をする
ようで・・・


まるでナルトが辛い時に見せる笑った顔を見ているみたいで・・

気になりまして・・


火影様に何か聞けれ
ばと・・

おかしいですよね、
あんな立派な上忍の
方にこんな事を感じ
るなんて、」


イルカは迷いながら
も、カカシから感じ
た印象を正直に火影
に伝えた。
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