封印された初恋〈カカイル〉

□桜封印された初恋五章
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 恋・・・





紅の言葉が、

イルカの耳から能に
ゆっくりと木霊した。





好き・・

恋・・・



カカシ先生・・に・・




紅の言葉を理解した途端
瞳を見開いて!


口をパクパクさせるが、
喉からは音すら出て来
なかった。



「だって恋でしょー♪


話しをしたい、
一緒にいたい、


泣くほど嫌われるのが
怖くて、

何時もしっかり者の
イルカが、カカシに
関しては狼狽するほど
なんて、


恋以外に考えられない
でしょう。


だだの仲間に嫌われても、
そこまで怖く無いでしょ。


ね、 イ・ル・カ。」



目を見開いているイルカ
の頬を両手で包み込んで
瞳を覗き込んで彼女が
語った。




今まで同僚にも、
火影さまにも言われた

恋疑惑!


考えもせず否定してきた。


今まで自分が同姓を
好きになった事はない
から、

思いもしなかった。


しかし、

モヤモヤと霧のかかった
晴れない心。



カカシの事が気になって
イライラしたり、
悲しくなったり、


あまつさえ、この年に
なって、

女性の前でボロボロ泣く
なんて・・


カカシの事に関しては、
感情の制御が効かない
有様だった。




紅先生に一つ一つ問わ
れて、

改めて気がついた。




桜の中の綺麗で透明な
切ない微笑みが、

イルカの脳裏に浮かんだ
・・・。



イルカの胸が、

ドックリと大きく疼いた。




イルカはあの時、


心囚われて・・・
恋をしたのだと。




やっと自覚した。




「・・〜はぁ〜・ぁ・・」




細い息は、ため息とも
呼吸とも分らない音を
させ、イルカの唇から
漏れた。




見開いていた瞳は、
緩やかに伏せられ、

少しイルカ本来の輝きを
取り戻した。




「・・す・・
・・すいません・でした。


紅先生、

もう・・わかりました。

みっともない所をお見せ
しました・・、


すいません・・でした。」



狼狽している自分に、
優しく諭してくれた
紅先生に頭を下げた。




「良かった、

少し落着いてくれて。


今まで無自覚だった
なんて、イルカらしい、

余りに可愛くて、

私まで、
イルカにトキメキそうよ♪」



からかうように明るく
笑う。



イルカも答えて笑おうと
したが失敗した。




「頭なんて下げないで。

なんて顔してるの、

困った時は相談に乗る
から、

何時で相談してね。

カカシ相手じゃ大変だと
思うけど、大丈夫よ。

カカシはイルカの事好き
だからね♪」



「・・ありがとう・・・
ごさいます。


気を使って頂いて・・、
そ・・それじゃあ、

俺・、

仕事が残っていますので、
行きます・・。」



イルカは足早に紅の隣り
から逃げ出した。




恋を自覚して、

心の霧も晴はした。




自分自身、驚きはしたが、
抵抗はなく、


自分が同姓のカカシを
好きなのだと分かった。


しかし・・・、

自分のような冴えない
男が、カカシに恋心を
持ってどうすると言う
のだ。




紅先生が言ったカカシが
イルカの事を好きなのは、
あくまでも同胞としての
情でしかない。


忍の世界では、
同姓の恋愛も比較的、
抵抗がないとはいえ、



カカシが自分を異性を
好きになるように見て
くれる事なんて、

想像しても浮かんで
来ない・・。



「・気持ち悪い・・・
・よなぁ・・


俺、

相手に・・なんて、」




カカシなら、
美男美女よりどりみどり、


凄腕の上忍で才能も有り
しかも、あれだけの美男子

憧れている人間なんて、腐るほどいるだろう・・


どう考えても、

自分のような冴えない
中忍では、


好かれても・・

迷惑でしかない・・。





自覚した恋は、

始まったときから
叶う見込みのない・・




片思いだった。
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