封印された初恋〈カカイル〉

□桜封印された初恋三章
2ページ/6ページ


子供は無償の愛情を受けなければ歪んでしまう。
誰か一人でも、愛情を正しく伝えてやる事が必要なのだ。


カカシはこの子達に愛情を注いだ人間が、自分の思っている人間と同じなら良いと願った。

それは、あの少年が今でも変りない暖かさを持ち、失っていない証明に思えた。


自己紹介を終えて、
子供達に明日の下忍選抜演習の知らせて解散させた。


一人残っている屋上に、三代目火影は現れた。


「カカシ、

どうじゃ、
三人の印象は?」


「火影さま、

良い感じのクソガキでしたよ。

三人とも個性的で、
明日が楽しみです。


ところで火影さま、
聞きたい事があるのですが・・・ 」


「なんじゃ、
カカシ。」


「あの子供達のアカデミーの担任、

海野イルカとは、どんな人物ですか?」


「ああ、
イルカか、


う〜ん・・
何か気になる問題でもあったか?

カカシ・・」


三代目はカカシの問いかけにヒゲを触りながら、心当たりを考えている」

「いえ、
ナルトがイルカ先生に随分 懐いている様子だったんで、

この里でナルトが懐くような人間が、

どんな方なのか、
興味がありまして」


カカシの問いに、火影が嬉しそうに答えた。


「ああ、
ナルトがなぁ、

そうじゃろう。

イルカは、
ナルトの良き師であり、兄であり、
父でもあるからのぅ〜、


いつも誠実で真剣で

誰にでも優しい、
教師の鏡のような男じゃ、

忍としては、
優しすぎるが、

ナルトやサスケのように問題のある生徒には、
無くてはならない存在なのだよ。


イルカはなぁ〜。

実にいい子じゃよ」


我が子自慢をする親バカ丸出しで、
イルカの話をする火影は眉を下げて笑った。


カカシは、呆れながらも確信を高めた。


海野イルカは、
カカシの初恋の人だと・・・


里の火影すら、
これほど愛おしむ存在の人なのだと。


「はははは・・

火影さまが、
そんな親バカ丸出しのお顔をするほど、

素敵な方なのですね。

あのナルトが、
ああなる訳だ!

まいりましたね・・

責任重大だ。」


ポリポリと頭を掻くと、カカシは首を曲げた。


「そうじゃな、

それも明日、
あの子達が合格すればの事じゃよ。


カカシ、
お主に、任す。

あの子達の事、
見極めてくれ・・」


「はい、
分かっています。」


カカシは
真剣に答えた。


明日で決まる。

オレと子供達の運命の絆が・・・


・・そして、
あの人との
絆も・・







・ 翌日・・


相変わらず遅れて来たカカシに、文句を言いながらも鈴とり合戦が開始された。



その頃、

火影の元にイルカが訪れていた。


イルカは、聞きにくそうに火影の前に座る。


「何が知りたい。

イルカ、
別に茶を飲みたかった訳ではあるまい。」


「ナルト達、
第七班の上忍師の方


どんな
先生なんですか?

厳しい方
なんでしょうか?」


「カカシのことが
気になるか?」


「ちょっと、
気になる噂を聞いたものですから・・」


イルカは、そう言って不安な顔をした。


確かに噂ではないが、今度ナルト達を担当する上忍のエリート忍者はたけカカシは、わずか六歳で上忍になり、
暗部最年少の隊長として勤め、
過去に殺人人形と呼ばれ、どんな過酷な任務でも厭わず行う厳しい方とか、
今でも、忍の中で恐怖事件が幾つも語りぐさになっているくらいの上忍だった。


それに何故か、カカシの下忍選抜は難関なのだと噂されていた。


イルカが心配になって、カカシのことを聞きに来たのは、カカシの噂を確かめる為でもあったが、火影さまにカカシの人となりを聞きたかったからだ。


イルカは不安げな様子をみて、
火影はイルカに忍道と書いた一冊の書を渡した。

「これは?・・」


「今まで担当した、
下忍の合否のリストじゃ」

「拝見します。」


イルカはカカシの過去に行った下忍の選抜リストを見て驚いた。


「これって!・ 」


イルカの見たリストは、すべて不合格と記載されていたのだ。


「そっ そんな!

これは噂以上だ!」


余りのショックに
息をのむ。


「カカシのテストは
ちと難しいかもしれん・・・」


火影はイルカにゆっくり告げた。

しかし、
イルカは興奮した様子で叫んだ。


「だからって、

これっ!!

まったくのゼロじゃないですか!」


「そう、
カカシはこれまで、
一人の合否者も出しておらん、

全て全滅しておる」


火影の言うことに、
イルカは呆然とした。


「・・そんな・

今まで・・
一人の合格者も出して・・ないなんて」


落ち込むイルカに火影が言った。


「イルカよ、
あの子らにとって、

今すぐ忍びになることが良い事なのかは、

わしですら分からん


しかし、
カカシの判断は確かじゃよ。」


火影はイルカに確信をもって語った。


火影さまが、ここまで信用されている方だ。

確かに優秀なのだろう。

しかし、
ナルト達には、厳しい人なのかも知れない。

イルカはナルト達が心配で、
さらに火影さまに聞いた。


「火影さま、

カカシ上忍の
人となりを教えて
もらえませんか?

差し支えないほどで良いですから、

教えて下さい。
お願いします。」


テーブルの上におでこを擦りつけて頼むイルカに火影はため息をつく。


「相変わらずじゃの〜、

お主は、
ナルト達が心配で
仕方ないと見える・・


大丈夫じゃ、

カカシもお主に負けないくらい、
ナルト達の事を思っておる。


お主のように素直ではない奴だがのう、

昨日もイルカの事を聞いてきおった。

ナルトがあのように
真っ直ぐ育ったのは、
イルカが居たからだろうと。

責任重大だと悩んでおったよ。


もし合格したら、
良い教師になるだろう。
イルカのようにベテラン教師ではないがな。

その時は、
カカシに教師の心得でも教えてやってくれんかな、

のう〜、
イルカ。」


心配性のイルカに
火影が子供がするように、
イルカの頭を撫でた。


「火影さま・・

そんなことは・・」


火影にとって、
カカシもイルカも我が子のように可愛い子達だ。

それに続くナルト達は、孫のように思っている。

「イルカ、

この里で生まれた子は、皆 ワシの家族だ。

幸せになって欲しいのう。」


火影は微笑んで、優しい言葉をイルカにくれた。
それだけでイルカには、何より心強い味方がいると安心出来るのだった。




その頃・・



ナルト達は、カカシに驚かされていた。


ナルトは丸太にくくられ、昼飯抜きのバツをカカシから言い渡された。

言いつけを破った者は、そく失格と言うカカシに、

サクラとサスケは、ナルトに昼飯を分け、
昼からは三人で鈴をとりに行く事に決めたのだ。

カカシの気配を探りながら、ナルトの口にサクラが箸を運ぶと、
今まで周囲にいないと思っていたカカシがもの凄い形相で近付いて叫ぶ。

「お前ら、

ルールに逆らうとは、

お前ら、
分かってるだろうな。」

みるみる空が曇り稲妻が走る。

カカシの凄みを聞かせて、もう一度聞いた。


「何か
言う事はあるか」


ナルトがカカシに言う。

「だって、
だって、

先生言ったてばよ、

だから
コイツら・・、」


「俺達は
スルーマンセルなんだろ、」


「そうよ!

私達、
三人で一つなんだから」

ナルトの言葉に続き
サスケ、サクラがカカシに向って言い放った。


「三人で一つ か、



ごうかぁーく。」


カカシがナルト達に、

合格を告げる。



・なんで?!・・



狐につままれたように、三人が目を丸くした。


カカシは嬉しそうにこう言った。


「お前らが初めてだ

今までの奴らは、
オレの言うことを素直に聞く、ボンクラばっかりだったからな、

忍者は裏の裏を読むべし、

忍者の世界では、
ルールや掟を破る奴はクズと呼ばわりされる。


けどなぁ、

仲間を大事にしない奴は、
それ以上のクズだ」


その言葉に、
今まで怪しいカカシを、ナルトは凄く格好良く見えた。


「これにて
演習終わり、

全員、合格!


第七班は明日より
任務開始だ。」


カカシは全員にもう一度合格を告げると、

ナルト達はやっと実感が湧いて、
大喜びしていた。


「さあ、

帰るぞ。」
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ