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 【跡部景吾の場合】




別に今まで女に執着なんて感じなかった。

適当に付き合って、紛い物の愛を囁いて、ただ気の赴くままに抱いて鳴かせて。

こいつとの付き合いだって、最初はそれで終わるつもりだった。



『跡部?急に考え込んでどうしたの?』

「あ?なんでもねえよ、気にすんな」

『わっ、頭くしゃくしゃに撫でないでよっ!』

「はいはい、悪かったな」



軽く両手を挙げて笑いながら謝罪の言葉を口にすれば、もーとか不満そうな声をあげながらもへらっと笑って許してくれる。

そのたびに俺の心は今までに感じたことのない暖かさを持ち、こいつが愛しいという気持ちに占領される。

たまにしか俺の名前を呼ばないその小さな唇も。

化粧っけがないそのすべすべの肌も。

すべての要素が俺のこいつに対する愛しさを増幅させるものでしかない。



『でさ、…聞いてないしょ跡部』

「…悪いな」

『もー、本当に大丈夫なの跡部?具合悪いならちゃんと休まないと…』

「大丈夫だ、心配するんじゃねえって」

『でも…』

「平気だって言ってるだろ…ちょっと黙っとけ」



そう囁いて俺の名前を響かせようとしている唇を自分のそれで塞ぐ。

すこし身体を震わせてから、俺の服の裾を掴んでくる仕草がとても可愛い。

二人を繫いだ唇から、俺の心の中にまた暖かい気持ちが流れ込んでくるのを感じた。




















なくならないのは、キスの味。

(こんなに幸せな気持ちになれるキスを俺は知らない)
(この気持ちは、こいつとキスをする度湧き上がるんだろう)
(それはなんて、幸せなキス)






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