あのボスの下

□悪党は、夢の続きを求めます。
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金儲けのためにラミアを手に入れようと計画していた、麻薬密売組織。

ラミアを取り逃がし、その代わりに古市と姫川の拉致には成功したが、2人を拉致したのが彼らの運の尽きだった。

古市と姫川を救出しようと男鹿達に奇襲され、半日もしないうちに工場を爆破された。

しかも、魔境の連中がうかつに手出しできないようにと“表”にアジトを構えてしまったため、爆発の騒ぎで警察の動きは早かった。

しかし、大人しく捕まる彼らではない。


ほとんどの組織の者が髪をアフロにしてできるだけ遠くに逃げようと車に乗り込んだ。

同じくアフロヘアと化したボスも、部下達に肩を貸されながら車に乗り込み、国境ともいえる魔境へ逃げ込もうとする。

奥まで逃げ込めば警察も手出ししてこないはずだ、そう信じて。


「早く!! 魔境へ!!」


運転中の部下を急かすボスだったが、


「!!」


辺りが殺風景になり、魔境まであと少しというところで、いきなり車がパンクし、スピンしてしまう。


「なに!!?」


車はガードレールにぶつかって止まった。

自分達だけかと思えば、あとについてきた車もタイヤをパンクさせて急停車する。


「なにが…」


車から部下達と共に降りるボス。

足下を見ると、車道には大量の黒い釘が撒かれていた。

それがパンクの原因だ。

一体いつ撒かれたのか。


「もう逃げられませんヨ」

「!?」


ボスが振り返ると、建物の陰から、待ち伏せていたかのように6人の青年達が出てきた。


深緑の軍服を着た、男性5人・女性1人だ。


「あなた達の逃げ場は我々『魔境犯罪者討伐部隊・六騎聖』が塞ぎました」と髪の数か所をピンで留めた容姿端麗の女性―――七海。

「抵抗しない方が利口かと」と両目に泣きぼくろのある小柄の男性―――三木。

「表を荒し、表を騒がしたからには覚悟してもらいマス」とハーフで金髪の男性―――アレックス。

「言い訳すんじゃねーぞ。さっき連絡で、工場で大量生産されていた麻薬も発見されてるからな」と右目下に四角いペイントをした男性―――郷。

「無駄な血…流しとうないやろ?」と眼鏡をかけ、『六騎聖』の隊長である男性―――出馬。


ボスは彼らの存在を噂で聞いたことを思い出した。

『表』を蹂躙した魔境住人を一掃する特殊部隊だと。

六騎聖に牙を向けられて逃げ延びた者は、ほぼ皆無に等しい。


奥歯を噛みしめ、ここで終わってなるものか、と懐の拳銃を取り出し、最後の抵抗を試みる。


「おまえらぁ!!」


声を張り上げると、部下達も慌てて拳銃を構えて返り討ちにしようとする。


「!!?」


だが、出馬に向けて引き金を引こうとした瞬間、拳銃は5つに切り分けられた。


目の前には、腰の刀を鞘におさめた細目の男性―――榊がいた。


「乙…」

「…………っ!!!」


今度こそ、ボスは自身の終わりを悟る。

欲を抑えていれば、今日という日は存在しなかったはずだ。

麻薬王の夢が断たれることもなかった。


「………クク…、夢も命も人生も、最期は一瞬だな…」


後悔先に立たず、と気色の悪い自嘲の笑みを浮かべた。


それでも出馬は一切情けをかけず、黒の手錠を取り出す。


「ほな、ブタ小屋に行こか…。……いや、ブタ小屋の方がまだ…マシかもしれんなぁ…」


この手錠一つで、一体どれだけ、積み上げてきたものを失うことになるのだろうか。





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