リクエスト2

□誘惑的な眠り姫。
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「最近、オレのこと避けてねーか?」

「あ?」

「何かあったか?」

「別に」

「メールもすぐに返ってこなくなったし」

「そこらへんの女子みたいに長々とメールするわけでもねーし。おまえと直接話したいことだってある」

「電話もでなくなった」

「寝てた」

「夕方にかけてもだ」

「掛け直すの忘れただけ。…ごめん」

「…いいけど」

「……うん、ホント、悪い…。最近ちょっと疲れてて…」

「疲れ? 家のことで?」

「んー。…詫びに何かおごってやるよ」

「奢りはいいや。…あのさ…―――」




オレの名前は姫川竜也。

東邦神姫の頭脳と言われ、同じく東邦神姫の神崎一(女)の恋人でもある。


付き合う前からは喧嘩ばかりしていて、付き合ってからも喧嘩ばかりしているが、今回ばかりはオレだって引っ込みがつかない時もある。


下校時刻となり、オレは神崎の側近である夏目と城山を誰もいない教室へ呼び出し、緊急会議を行った。


神崎とオレが付き合っているのは、最近夏目と城山に知られたばかりだ。

思いっきりキスしてるとこ見られたしな。

散々渋っていたが隠す言い訳をすることなく、神崎は2人にだけは打ち明けたようだ。

ずっと隠し続けていた神崎に対して2人は寛容だった。

城山は「見守らせてください」と言ってたし、夏目はオレ達の関係を薄々感じとっていたのか「応援してるよー」と軽く言うだけでおさまった。

こいつらも簡単に神崎の嫌がるようなことはしないだろう。


さて、話を戻そう。


「急にどうしたの」


夏目と城山を前列の席に座らせ、オレは教卓の前に立って見下ろす。

とりあえず聞いてほしいことを率直に言おう。


「実はな…、神崎とケンカしちゃったんだぜ」


城山は「しちゃったんだぜ?;」と首を傾げる。

頬杖をつく夏目はうんざりしたようにため息をついた。


「そんなのいつものことじゃない。『喧嘩なう』なのは今に始まったことじゃないでしょ? 明日になったらどーせ仲直りしてるんだし」


「どーせ」って言うな。

確かに喧嘩してもすぐに元に戻ることはある。

お互いに反省し合って、どちらかから声をかければ何事もなかったかのようになるのだ。

しかし、今回はそうは言っていられない。

夏目が帰る準備をし始めたので本題に入る。


「ケンカの相談も含め、てめーらに聞きたいことがあるんだよ。…おまえら、神崎の家に行ったことあんのか?」


2人の動きが止まる。

そして同時に即答した。


「「ない」」

「ねーの!?」


驚きとともに安堵した。

そう、神崎とのケンカの原因がそれだ。


「今度神崎の家に行ってもいいか?」と尋ねたら、すごく嫌な顔をされて「ダメだ」「今は来んな」と一蹴された。

オレも引き下がればよかったものを、ムキになって食い下がってしまった。

長々と言い合いが続き、「来んな!!」ときつい一言を食らってきたところだ。

あれは応えた。


それにしても、まさか夏目と城山まで招いてなかったとは。


「姫ちゃんは行ったことないの?」

「ない。つーかそれで喧嘩した。あそこまで本人が嫌がるとは…」


オレは喧嘩の内容を手短に話した。

あまり長く話してると心の傷口が開いてしまう。


「まー、家が家だからねぇ…」


夏目は天井を見上げた。


「オレ達も、途中までしか神崎さんを送ったことがない」


城山はうつむき、嘆息をつく。


神崎が嫌がる原因はわかる。

あいつは極道一家の娘だ。

父親は組長、家では何十人の組員たちが出入りしている。


大事に大事に育てられた箱入り娘なのだ。


その娘が男を家に招き入れたら家の奴らはいい顔をしないだろう。

密かに脅されそうだ。


しかし、それを恐れて何が恋人だ。

堂々と見せつけてやればいい。


「そっかぁ、姫ちゃんも行ってないのか…」

「せっかくの神崎との帰り道を邪魔して悪いが、オレ達のこと応援してくれてるんだったら協力しろ」


命令口調なのはオレの悪癖だが、他に相談相手もいないしな。


「あー、帰り道のことは気にしなくていいよ。最近神崎ちゃん送り迎え車だから」

「あ?」


そういえば、来る時も車だったな。

徒歩でも30分とかからず通える距離なのに。


「ま、物騒なことあったら心配するよね」

「夏目っ」


夏目の言葉に城山が叱咤する。

夏目の呟きと城山の反応に引っ掛かりを感じた。


「…何かあったのか?」

「ん―――」


もったいぶってやがる。

こいつはそうやって人の反応を見るのを楽しんでやがるからタチが悪い。


「夏目」


声を低くして再度尋ねる。

城山は「なんでもない」と言うが、オレは無視した。

城山も隠し事が下手過ぎる。

それにここ最近の神崎の様子がおかしかったのはオレだって感じていた。


「……これは、姫ちゃんを家に呼びたくない理由になるかはわからないけど…、オレが言ったってのは内緒だよ? 城ちゃんもね」


城山に微笑む夏目。

城山は「おまえなぁ」と呆れたように右手で顔を覆った。


「いいから話せよ」


オレが催促すると、夏目は「実はね」と話し出す。





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