リクエスト

□「H箱」は正しい。
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その日神崎は、ゲームをするために姫川の家に呼ばれた。

てっきりテレビゲームをするだけかと思いきや、姫川は、全国の大人にとっては懐かしいものを、引っ張り出してきた。


「ツイスターゲ―――ム!!」

「……………」


自室に戻ってきた姫川は、ツイスターゲームの道具を見せつけた。

床にあぐらをかいて座っていた神崎はしばらく、つっこむかどうか戸惑う。


「…面白いゲームを見つけたって言ってたけどよ…」

「これのことだけど?」


あっさりと返されてしまう。

騙されたような気がして、神崎のこめかみに小さな青筋が立つ。


「そんなの、今時やってる奴なんかいるのかよ」

「いるいる。これからオレ達がするんだからなー」


歌うように言いながら、姫川は自室の床にツイスターゲームのシートを敷き、スピナーと呼ばれるルーレットをセッティングする。


「一度本家に戻ったとき、物置の中から発見したんだよ。父親か母親が昔遊んだものかもな」

「おいおい、オレはテレビゲームすると思って来たんだぞ」

「べつにテレビゲームとは言わなかっただろ?」

「…っ」


確かに。

姫川のことだから、発売日前の新作のゲームを購入したとか勘違いしたのは自分だ。


神崎は視線を見下ろし、ツイスターゲームのシートを見る。


左から、赤、青、黄、緑の4色の○印が描かれたシート。

各々の色の数と位置はバラバラだ。

スピナーには、右手、右足、左手、左足とボードの色が描かれている。


経験のない神崎だが、ルールは聞いたことがある。

スピナーをまわし、その指示版に示された手や足を、シートの色にのせていき、倒れないようにするゲームだ。

2人か、それ以上で遊ぶためのもの。

物理的に届かなかったり、ギブアップしたり、倒れたりしたらゲームオーバー。


セッティングを完了させた姫川は立ち上がり、「じゃあ、さっそく始めようぜ」とノリノリだ。

たかがゲームで、なにを楽しそうにしているのか、神崎にはまったく理解ができなかった。


「やっぱりやるのか?;」

「当たり前だろ。いつもオレのゲーム貸してやってんだから、付き合えよ」

「……………」


仕方ないと言いたげなため息をついたあと、神崎はシートの上にのった。


姫川はスピナーに手を伸ばし、横についたスイッチを入れた。


「!」


すると、スピナーが勝手にまわりだす。


スピナーは左足→青を示した。

姫川は指示通り、左足を青の上に置いた。


その30秒後、今度は神崎の番だ。右手→黄。


「このスピナー、自動的にまわるのか」

「そう。ランダムにな」


姫川、右足→緑。


「時間に遅れたら負けってのも追加するか」


神崎、左足→赤。


「あ、神崎。オレに勝ったら、オレのこと好きにしていいぜ」


姫川、右手→赤。


「は?」

「で、オレが勝ったら、おまえのこと好きにするからな」


神崎、右足→青。


「結局同じじゃねーか;」


姫川、左手→青。

一気に、神崎との顔の距離が縮まる。


「…だいぶ違うと思うけど?」

「……………;;;」


神崎の背筋に悪寒が走った。





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