リクエスト

□こっち向いて、リーゼント。
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いつものムカつくリーゼント。

今日こそ、おまえに言ってやる。


たとえ悪い結果になったとしても、そいつのせいで胸の中に誕生してしまった小人を始末することができる。

あいつと目が合うたび、話すたび、近づくたびに遠慮なく心臓を太鼓のように打ち鳴らしてくる小人。

今日がてめーの最期だ。


放課後の教室、オレはあのリーゼントが教室にひとりいることを確認し、中に入る。


「姫川」


窓際に立っていた姫川はこちらに体を向けた。

息を吸い、勇気と同時に頭の中で考えていたセリフを吐きだす。


「オレはてめーが好きだ!! 付き合いやがれ!!」


もうちょっと穏便な言い方で言うつもりだったが、姫川に対する日ごろの態度が出てしまった。


「神崎…」


姫川はゆっくりと間近までオレに近づいてきた。


オレの胸の小人が暴れている。

胸ん中で高速除夜の鐘を打ち鳴らしている。

オレの煩悩が吹っ飛ぶどころか膨らんでるぞ、このやろう。


「神崎」


姫川が真剣な顔でオレを見る。

さあ、こいつはどう返す。


「チェンジで」





*****





「どういうことだああああああ!!!;」


絶叫とともにオレはベッドから半身を起こした。

廊下から数人分の足音が聞こえ、扉を開けて中に流れ込んでくる。


「どうされましたぁ! 若ぁ!!」

「若ぁ!!」

「出てけ!! なんでもねえよ!!;」


オレは枕を投げつけて追い返す。

全員出て行ったところで深いため息をついた。


夢。

よかった。

でもその反面、ショックを受けた。

ついに夢の中にまで出てくるようになったからだ。

出てくるなら「チェンジ」とか言うな。

余計に告白しにくくなったじゃねえか。


胸を押さえると、まだ小人が暴れていた。


てめえもいい加減に目を覚ませ、と胸をコブシで軽く殴り、咳き込んだ。





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