リクエスト

□桃姫と鬼神。
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むかーし、むかし、ある山に、男鹿じいさんと古市ばあさんが住んでいました。

ある日、男鹿じいさんは山狩りに、古市ばあさんは川に洗濯に行きました。


古市ばあさんが川で洗濯をしていると、川上から、どんぶらこっこ、どんぶらこっこと、大きなおっさんが…。


「それ(1話)はもういいよっ!!;」


古市ばあさんはつっこみ、見事に大きなおっさんをスルー。

目も合わさない。


続いて、川上から大きな桃が流れてきました。


「おお! なんて大きな桃…」


たまげた古市ばあさんは、流れてきた桃を川から引き上げた。


「重い…っ!;」


大人1人分の重さに、非力な古市ばあさんは手に持たず、転がして持って帰ることに。


家に帰ると、山狩りを終えた男鹿じいさんが先に帰ってた。


「古市ー、メシまだー?」


険しい山道を、大きな桃を転がして持って帰って来た古市ばあさんと違って、男鹿じいさんは汗ひとつかいていない。


「おじいさんとおばあさん役交代した方がよかったんじゃ…;」

「お! なんだその桃!」


男鹿じいさんは大きな桃に目を留め、驚いた声を上げた。

古市ばあさんは床に腰を下ろし、ぽんぽんと大きな桃を叩く。


「川から流れてきたんだよ。普通の奴ならスルーだけど、拾わないと物語始まらないだろ」


もっともなことを言う古市ばあさん。


「よし、じゃあさっそく切るぞ」


男鹿じいさんは切れ味のよさそうな包丁を取り出した。


「待て男鹿。それで真っ二つはまずい;」


昔話では確かに真っ二つに割るが、ちょっと現実的に考えて、中の赤ん坊まで真っ二つになってしまう。


仕方なく、男鹿じいさんは一刀両断せず、


「とうっ!!」


スイカのように金属バットで叩いて割った。


ゴッ!!


明らかに桃の感触でないものを叩いた。


2つに割れた桃からは、元気な男の子が…。


「死んでる――――っ!!!;;;」


大きなコブを作り、真っ青な顔でぐったりとした男の子が入っていた。


「てめーが転がして…、てめーが問答無用で叩くからだ…;」


奇跡的に生きていた男の子は古市ばあさんと男鹿ばあさんを交互に指す。


「おおなんてカワイイ男の子だ。桃から生まれたので桃太郎と名づけよう」


男鹿じいさんはムリヤリ話を戻すように、棒読みで小さな男の子を抱きあげた。


男の子は頬を膨らまし、不服な顔をする。


「桃太郎ー? もうちょっとマシな名前はねえのかよ」

「この話、桃太郎なんですけど!?;」


高貴な名前がいいと駄々をこねるので、改名することに。


「桃から生まれたし、「桃姫」なんてどう?」

「いっそ川から流れてきたのにちなんで、「姫川」なんてどうだ?」

「どっちでもいいよ。この時代って改名多いし。義経と牛若丸がそれだし。桃太郎は却下だ」


まさかの桃太郎否定。

というわけで、男鹿じいさんからは「姫川」、古市ばあさんからは「桃姫」と名付けられ、男鹿じいさんと古市ばあさんは我が子のように可愛がりました。





*****





「おじいさん、この本はなんだ?」


姫川が桃から生まれて数年が過ぎたある日、姫川は男鹿じいさんの布団の下から一冊の本を見つけた。


「ん? ああ、春画だ」


春画とは、現代でいうエロ本のことをいう。


「おじいさんも春画なんて持ってたのか」


すでに古市ばあさんの布団からも春画を発見していた。

しかし、男鹿じいさんの春画は古市ばあさんのような普通の春画とは少し違う。


「……男同士がヤってる…」

「オレとばあさんの参考書だ」


男鹿じいさんはどや顔で言ってみせた。


「……………」


まだ幼く、好奇心いっぱいの姫川は興味津々に読み始めた。





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