リクエスト
□きおくしょーしつです。
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その日はいつもと変わらない日だと思っていた。
昼休みに神崎が購買にパンとヨーグルッチを買いに行ったっきり、戻ってきていない。
サボりかと思ったが、オレや、夏目と城山になにも言わずというのは珍しいことだった。
腰巾着の2人もなにかあったのではないかと心配している様子だ。
まさか、また他の不良校に絡まれたんじゃないか。
授業が終わったら学校中を捜しにいこうと思った時だ。
「あの…」
授業中、神崎が教室に顔を出した。
まさか授業中に戻ってくるとは。
オレなら終わるまで待つのに。
算数の授業をしていた佐渡原は少しびっくりした顔をし、なかなか席に座ろうとしない神崎に「ど、どうしたの? 席に着かないの?」と尋ねる。
「はぁ…」
神崎は教室を見渡した。
なにやら困惑している様子だ。
「オレの席って…どこだ?」
教室内がざわめき始める。
「アンタの席はここでしょっ」
神崎の後ろの席の大森が、引かれたままの神崎の席を叩く。
「あ、そこか。ありがとな」
「ありが…!!?;」
礼を言われた大森は顔を青くして驚愕する。
オレを含め他の奴らも驚いていた。
神崎が素直に「ありがとう」なんてありえない。
席に着いた神崎に、大森は「もしかして寝てた?」と声を潜めることなく尋ねた。
どうやら、寝惚けていると思ったのだろう。
神崎は「ん―――」と天井を見上げ考えてから答える。
「寝てたというか…」
「ここで、なにか質問は?」
佐渡原は問題が伝わっているかの確認。
そういうのは真面目組がすることだが、今回はなんと神崎が手を挙げた。
再びざわめきだす教室。
「か…、神崎君…」
佐渡原も仰天していた。
当てられた神崎は真顔で言う。
「オレって、誰なんだ?」
シン…、と一斉に静まり返った。
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