リクエスト
□ヘタレ君の下剋上。
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※『すべてオレです。』シリーズ第4弾!
姫川と神崎は卒業後、仕事をしながら一緒の部屋で同棲していた。
同じマンションで過ごしていた自分たちの分身は、相性のいいもの同士、無事に世に送り出すことができた。
これはその数日後の話。
「ただいまぁ」
姫川は、玄関で神崎の靴があることを目で確認したあと、靴を脱いで廊下を渡る。
リビングへ向かう途中、自分たちの寝室が半開きなことに気付き、そこから中を覗いてみると、ベッドに腰掛け、うつみきながら鼻をすんすんと鳴らしている神崎の姿が見えた。
「…神崎?」
ドアを開けて中に足を踏み入れると、神崎ははっとして顔を上げた。
すると、姫川の顔を見るなり、真っ赤な顔で大粒の涙を流し始める。
「ふぇ…っ、姫川ぁ…っ」
「…っ!!」
(神崎が泣いてる…っ!!)
滅多に見せない神崎の泣き顔に、姫川の内が状況を読まずにムラムラしてきた。
その場に持っていたカバンを落として神崎に近づく。
「ど…、どうした? 神崎ぃ…。仕事で辛いことでもあったか…?」
平静を保ちながら神崎の肩に手を置き、優しく声をかけた。
「ぐす…ッ」
神崎は鼻を鳴らしながら、右手で姫川の裾をつかんだ。
それが引き金となり、姫川は神崎をベッドに押し倒す。
「オレが慰めてや…」
「なにしてんだゴラァッッ!!!」
ゴッ!!
「っ!!?;」
背後から踵落としを食らい、しばらく痛みに悶えた姫川ははっと後ろに振り返り、両手にヨーグルッチを2個もって冷めた視線でこちらを見下ろしている神崎を見上げる。
「か、神崎が2人…!!?;」
泣き顔の神崎と顔をしかめている神崎を交互に見た。
「よく見ろ!」
「いや、よく見ても神崎なんですが;」
「ヘタレのオレに決まってんだろっ!!」
泣いていたのは、神崎の分身・ヘタレな部分のヘタレ崎だった。
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