リクエスト
□今も昔も変わりません。
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時間が経過すれば元に戻るらしい。
神崎がほっと胸をなで下ろすと、姫川はふんぞり返って言いだした。
「いくらだ?」
「あー?」
「いくら出せば、オレを満足させてくれる?」
かわいい顔でそんなことを言われた神崎は、
ゴン!
「――――っ!!」
遠慮なくその頭に拳骨を食らわせた。
姫川は頭を抱えてうずくまる。
「てめえは昔からそういう性格か!?」
「なにすんだ無礼モンが!!」
姫川は椅子から立ち上がり、神崎と顔を近づけて睨み合った。
片方が若返ろうがよく見る光景だ。
「かわいくねーガキだな! 素直に遊びたいって言えねえのかよ!」
「……………」
なにを思ったのか、姫川は神崎を睨んだまま椅子に座り直す。
「…名前は?」
「神崎一」
人生で同じ人間に2回自己紹介することになるとは。
「よし、一」
「躊躇わず下の名前かよ;///」
「おうまさんになれ」
「……………」
神崎の脳裏に、それを連想させるような姫川との夜がよぎり、首を横に振った。
「却下だ」
「なら、お医者さん」
「……………」
思い出したくもない、他人に言えない1ヶ月前の夜。
再び首を横に振る。
「却下」
「女王様ごっ…」
「おまえ本当に中身幼児か!?;」
狙っているとしか思えない遊びがぽんぽんと5歳児の口から飛び出している。
大人な意味で受けとってしまう神崎も神崎だが。
「大体、ごっこ遊びとか、女子かっ。もっと、サッカーとか野球とか…」
「そんなもの、やったことない」
全員が「え」と驚いた。
姫川は「悪かったな」と頬を膨らませてうつむく。
親が過保護だったのか、家を出る機会がなかったのか。
ずっと外で遊んだり、家の者に相手をしてもらっていた神崎には想像できなかった。
「……………」
「!」
神崎は姫川の手をとり、立ち上がらせた。
「だったら、オレが教えてやるよ」
呆気にとられているのをいいことに、神崎は姫川を連れて教室の外へと出た。
「待ってください、神崎さん!」
「2人じゃサッカーもできないでしょ」
そのあとを城山と夏目に続き、
「神崎先輩、ウチも行くっス!」
「これだから男子は」
「ちょっと、もうすぐで先生来ちゃうわよ」
レッドテイル、
「女子が行くならオレもー」
「ダッ」
「男鹿、坊っちゃまも遊びたがっておられる」
「面倒だなー」
男鹿達も教室を出て行った。
昼休みも終わってあとから来た佐渡原は、
「ボイコット!!?;;」
誰もいなくなった教室でひとり涙していたとか。
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