B O X - 1

□In the pocket.
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カギ キャンディ コイン
リップクリーム 髪留め 列車の切符


或いは 自分の手


そういうものを
いつも私はポケットに突っ込んでしまうから

私は何かをそこから取り出す時
すぐに立ち止まる


あなたは苦笑して
その様子を まるでちいさな子を見るような目で見つめるんだけど


多分


貴方がまだ見た事無い“好き”も

この中に、いくつか混じっていると思う





[in the pocket.]






「ちょっとまって」

「何さー?」

「切符、無い!」

「えー!?」



私は西へ、ラビは南へ。



さっき貰って、大分時間があったからその辺をぶらぶら散歩しているうちに…

ポケットに入れた筈の切符が、忽然と、消えた。


「落としたー!」

「…またいつものパターンっしょ?
よく探してみー?」

「違う!ちゃんとポケットに入れたもん!」

「ちゃんとって…突っ込むのはちゃんとって言わないんよ?」


迫る時間に、気が焦る。


ポケットを探る手に当たるのは、がちゃがちゃとそれこそ無造作に突っ込んでいたガラクタばかり。


「そんな事言ってー…
いくらちょっとでもオレと居たいって言っても列車は待っててくんないぞー?」

「そんなんじゃないよッ!」


…そんな気持ちが無いと言えば嘘になる、けど。

さすがに列車を逃してまでは、ね。



「あ!あった…」

「ほら、いつものパターン」



ラビの言葉を無視して、指先にやっと触れたその感触を、私はぐいっとそこから引き抜いた。


と。


「あー…」

「まったく…」


引きずられてばらばらと溢れ落ちた、その他ガラクタたち。

部屋のカギ、カラフルなキャンディが3つ、前の任務で居た国の綺麗なコイン。

イチゴの匂いのリップクリーム、キラキラした飾りが可愛い髪留め。


「ポケットの中身はオンナノコらしいんだけどなー」


苦笑を浮かべながらしゃがみこんで、それらを拾いあげるラビの台詞に、かぁっと頬が熱くなった。

全部拾い終えたラビがひょいと顔をあげて、そして私の顔を見て、何とも言えない笑みを溢す。


「顔真っ赤にしちゃって…」


はい、とそれらをひとまとめにして私に手渡すと、ぽんと私の頭に手を乗せて。


「なんでもポッケに突っ込むのやめとけよ」



まだ当分潜めておくつもりだった『それ』が、うっかり溢れてしまった気がして、私はガラクタ達をまたポケットに無造作に突っ込んだ。




END

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