ごく/せん
□未来への旅路
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ザワザワと行き交う人の群れ。
誰もが大きな荷物を預け、楽しそうな笑顔で。
なのに、終わりのない旅路だと言うのに、〃彼〃沢田慎は―――まるで一泊や二泊旅行に行くような小さなバック一つ。
空元気見え見えで笑顔を浮かべる仲間達と、破天荒な愛すべき担任教師の彼女。
―――そう、今日は、沢田慎がボランティアの為にアフリカへと旅立つ日。
==未来への旅路==
「沢田、しっかりやれよ!熱中症に気を付けろ。それから生水は飲むなよ…………えーと、後は…」
「ヤンクミ!解ってるって、そんな事!な、慎」
まるで心配性な母親が小さな子供に言い聞かせているかのように、久美子が慎へと注意を並べ立てていると内山が久美子の肩を叩き止める。
「―――サンキュッ、ヤンクミ。気を付ける」
注意だけではなく、実際に大量の薬を持参して来たらしく、両手で抱える程の紙袋を久美子は慎へと押し付けた。
慎は苦笑を浮かべながらその紙袋を受け取った。
「ヤンクミじゃねーけど、ホントに注意しろよ!特に怪我とか……アッチは簡単に医者に掛かれねーんだからさ!」
慎の事だから心配ねーと思うけど……、と注釈付きで内山がそう言えば―――、
「怪我や病気も心配だけど、食べ物が口に合うかも重要だぞ!」
との熊井らしい言葉。
それには皆声を上げて笑った。
「―――何だよ!大事な事だぞ。食べなきゃ人間生きてけねーんだからっ!」
皆に笑われて、熊井は少しムッとして口を尖らせそう言った。
「悪い、悪い、確かにその通りだよな」
そう言いながらも久美子は笑いを止める事が出来ず、クックックッと肩を震わせていた。
「慎、頑張れよ!何処にいても俺等は仲間だ!」
「俺等に出来るよーな事はねーかも知れねーけど、何かあったら連絡しろよ」
「イヤイヤイヤッ!なくても連絡くれよ」
野田、南の言葉に内山が突っ込む。
「―――ああ。ありがとう……必ず……」
仲間達の激励に慎は言葉を噛み締めるようにそう言った。
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