忍夢と僕・1
□僕を嫌うモノ
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あれから、どれくらいの時間をここですごしているのだろうか。
真っ暗な檻の中に閉じ込められているかのような、そんな場所に長いこといるような気がする。
足の裏に何も感じないのは、恐らく体が宙を浮いているからだと思うが、なにせ視界を奪われいるため確かめようがない。
それはともかく、風景は何も変わらないものの、一つだけ感じることがあった。
『(体が……縮んでいる……)』
なんとなくだが、体に違和感を覚えるのだ。
服もブカブカになっているような気がするし、靴なんてどこにいったかわからない。
素足になっているのは確かだと思う。
暗いため、確認する手段はないが。
『(いったいどうなっているんだ……)』
ともかく、頭の中で、あの一方的な会話を思い出す。
わかっているのは、「〇の森」の主である「〇雨」とかいう者の名前、声の主である「〇月」、「別世界」。
そして、「〇月」と名乗るあいつが僕の事を知っているということと、僕は今「帰っている」ということだけ。
結果、僕は何もわからないまま「別世界」に飛ばされたのだと思う。
よく聞こえなかったから、肝心な部分は何もわからないが。
過去の記憶を掘り返してみるが、こんな経験は今までになかった。
産まれ堕ちるか、死ぬか。
僕にはそれしかなかったのだ。
前世の記憶があったり、獣語を使える時点でそこらの人間と違うのはわかっていたが、いきなり別世界へ飛んだ記憶はない。
しかも、あいつが言うには今現在僕は「帰っている」。
ということは、僕は今から行く世界で、一度生まれて死んでいるということになるわけだが。
いったい、いつの世界なんだろうか。
と、その時。
突然の浮遊感に襲われた僕は、思考を奪われ、思わず目を閉じた。
浮いていた体は回転し、落下していく。
そして聞こえてくる叫び声。