忍夢と僕・2

□僕とシリーズ・カカシ視点・1
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先生、お元気ですか?

こうやって、慰霊碑の前で報告するのも、今となっては日課ですね。

きっと、俺にとっての精神安定剤のようなものなんです。

だから、怒らないで下さいね?

先生は、優しい人だから。俺の背中を押してくれるでしょうけど。

あっ、そういえば。

ナルトが5歳になりました。

あの子は、毎日独りで居ます。

里の痛みをすべて背負ってくれたのに、英雄視なんかされていません。

それどころか、九尾として見られています。

今となっては、先生がしたことが正しいのかさえ俺にはわからなくなりました。

先生、そこに居るなら何か答えてください。

「…ナルトを、助けてください」

真夜中の慰霊碑前。

ここに来ると、勝手に涙が溢れてくる。

木の葉の里で暗部として任務をこなす俺は、大切な仲間と先生と父親を亡くしてしまった。

先生の忘れ形見であるうずまきナルトは、俺にとって唯一近い存在だ。

だけど、ナルトには簡単には近づかせてもらえない。

いや、許されない、が正しいかな。

遠くで見守ることしかできないんだ。

四代目火影・波風ミナト。

俺が先生と呼んでいた人は、里一番の忍で、ナルトはその息子だから。

「(今日も、何も答えてはくれないか…)」

答えが返ってくるとは思っていないけど、やっぱり心のどこかでは期待してしまう。

先生は、言葉では言い表せないくらい強い人だったから。死んでも尚、力があるんじゃないかって。

もちろん、そんな力があるわけない。俺が、勝手にそう思っているだけ。

「(ナルトの様子見て帰るか…)」

慰霊碑に頭を下げ、瞬身でナルトの家に向かう。

今日は、何もされてなければいい。

九尾として見られているナルトは、里の奴等から罵られ、嫌がらせを受けている。

中には、度が過ぎる奴も少なくはない。

そして、ナルトが一つ歳を重ねれば、嫌がらせもエスカレートし、人数も増えていった。

任務が早く終わった日は、必ず慰霊碑に行った後にナルトの様子を見に行く。

これも、最近では日課になっている。

神様がいるのなら、俺の願いは一つ。

先生だけでもいいから、甦らせてほしい。

もう、ナルトを独りにさせないで。

神様なんているはずがない、そう思っていても願ってしまうのは、きっと俺には何もしてあげられないとわかっているから。

俺じゃダメなんだ。

そばに居てあげることが出来たとしても、それ以上のことは?

無理だ。

任務をこなすことは出来るのに、目の前にいる男の子一人救うことができない。

簡単に人を殺めることは出来るのに、目の前にいる男の子を罵る相手を殺すことは許されない。

九尾と木の葉は切っても切れない縁だとわかってはいるけど、目の前にいる男の子はまったく関係がないのに。

「(…あぁ、今日は窓ガラスが割られている)」

木の影に隠れながら、枝を握りしめた。また、涙が溢れてくる。

「(なんで、泣いてんだろ…)」

守るべき者達の存在に気づいた時には、もう手遅れだった。

仲間は戦死し、先生は九尾に敗れ、父親は自殺して。

今も、目の前でナルトが泣いているのに。俺の体は動くことを知らない。

独りぼっちのナルトを、守らなきゃいけないのに。
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