忍夢と僕・2
□僕とシリーズ・ナルト視点
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柚姫は、俺にとって絶対的存在だ。
柚姫なしではきっと生きていけない。
そんなのイヤだ。
家族や友達がいなかった俺を助けてくれた柚姫。
記憶の中での初めての家族であり、友達であり仲間。
柚姫は、孤独の恐ろしさを知っている。
寂しさを知っている。
闇を知っている。
柚姫は色んな事を教えてくれたんだ。
家族の存在、友達の存在、仲間の存在、俺の存在。
それがなんの意味を持つのか、ゆっくりと教えてくれた。
俺に生きる目的を与えてくれたし、何より「特別」だと言ってくれた。
俺にとっても柚姫は特別だし、それにずっとそばにいるものだと思っていた。
でも、消えた。
木の葉に追い出された。
光を奪われた。
――『うずまきナルト!!!!』――
俺に名前を思い出させてくれた柚姫。
――『……そういえば、まだ言ってなかったな…。ナルト、総隊長就任おめでとう…。よく頑張ったな』――
俺に祝いの言葉をくれた柚姫。
――『鬼人、こいつはナルト。僕の友達だ…』――
俺を誰かに紹介してくれた柚姫。
――『お前がいないと部下も困るだろう?それに、里にとってお前は必要なんだ』――
俺という存在価値、仲間がいるのだと教えてくれた柚姫。
――『はすけ!!…こいつは、自ら辛い道を選んだ。暗部がどういう任務をこなすか知っているだろう?』――
俺に死を実感させてくれた柚姫。
――『ナルトが暗部では、友にはなれないか!?』――
友達に境界線は必要ないのだとわからせてくれた柚姫。
――『みんなで食べるご飯は、一人で食べるよりいい。みんなで食べるご飯は、二人で食べるよりいい。…例え家族じゃなくても、こんなにも美味しい』――
家族の暖かさを教えてくれた柚姫。
柚姫は俺に、色んな「初めて」を与えてくれた。
ずっと、俺の名前を呼び続けてくれた。
古びたアパートの一室。
最近まで、柚姫の匂いが充満していたこの部屋には、もう血の臭いしかしない。
誰のものかもわからない、血の臭い。
臭くて、吐き気が止まらない。
柚姫がいない俺の世界は、ただひたすら真っ暗だ。
忘れられない、柚姫の後ろ姿。
終末の谷で、あいつは振り向きもしなかった。
冷たい視線、冷たい態度。
ずっと、俺の味方だと思ってたのに。
――『…僕は、妖狐の味方だ!!』――
違った、俺の勘違いだった。
里の奴らが柚姫に攻撃を仕掛けるなか、サスケかシカマルかキバか。
誰かはわからないけど。
言ったんだ。
「柚姫が、泣いている」
胸が締め付けられた。
それは今も変わらない。
思い返せば、俺は柚姫が泣いているところを見たことがなかった。
いつも笑っていたから、最後に柚姫を見たあの日、あの雰囲気が頭から離れない。
柚姫が去って、俺達4人は泣き崩れた。
情けなくも、声をあげて泣いた。
大きい声を出せば、いつもみたいに柚姫が戻ってくると思ったんだ。
カカシが肩を叩くまで、俺はその場から動けなかった。
夢ならいいのに、何度もそう思い、願った。