忍夢と僕・2

□僕とサイの悲鳴・2
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男が去った後。

ジッと壁を見つめ、明日がこないことを祈った。

無駄だとわかってはいるが、奴の顔を見たくない。

横目でユウを見れば、もうチャクラは消えてなくなっていた。

治療が終わったのだろう。

顔色もよくなり、呼吸も落ち着いているようだ。

そして、ようやく目を覚ました。

『――っ!?ん゙んっ!!』

彩「……ここは……、――っあ…僕の……足……、僕の……あっ、あぁぁあ!!僕の足がぁあ!!」

『ん!!??ん゙ん!!んっ!!ん゙ん!!』

顔を上げ、己の体を見た瞬間、ユウは目を見開き叫んだ。

左手で喉を押さえ必死に過呼吸を治めようとする。

そして、充血した目から涙が溢れでるなか、やっとこちらに気がついた。

袋の入り口から顔を出し、僕の姿を見て震え始める。

彩「そっ…そんな…。あっ、柚姫…なんで…なんでっ!!!!」

涙を流すユウを見て、また洪水の如く涙が溢れでる。

色んな意味で、僕はユウをほっとけなくて、前を歩かなきゃいけないと思っていたのに。

任務先で出会い、色々あったが、村を出て木の葉で暮らすことになったユウ。

その後、僕のために「根」という組織に入り羅月と契約まで交わした。

だからこそ、ナルトや我愛羅とは違った意味でそばにいなくてはと、守らなくてはと思っていた。

『(それなのに、この様か…)』

しばらくの間、ユウはカタカタと震えていたが、時間がたつとともにそれもだんだんと治まってくる。

周りを見渡すと、音を立てないように袋から全身を出した。

彩「――っ、今助けるから…」

地面を這いつくばり、何かを探し始める。

傷口から菌が入るんじゃないかとヒヤヒヤしたが、机の前まで行くと左手の力のみでゆっくりと立ち上がり椅子に腰かけた。

そして、ソッと引き出しを開け取り出したのは、ユウが持ち歩いているあの頼りない本。

彩「よかった、捨てられてなかったみたいだ…。確かここに…」

本をパラパラとめくっていると、紙切れが一枚落ちてくる。

『(あれはっ…!!)』

見覚えのあるその紙は、まだ村にいた頃、ユウの部屋にあった巻物の中の絵を千切って持ってきたものだった。

『(いつの間に…)』

僕の疑問を察するかのように、ユウはヘラッと笑うと紙を丸めそれを口にくわえる。

彩「…本のしおりとして使ってたんだけど、まさかこんな所で役に立つなんてね。…忍法、超獣戯画」

左手で印を組み、ポンッと音をたて出てきたのはネズミだった。

それにチャクラを込めると、また地面を這いつくばり地下牢へと続くドアを開ける。

彩「もし結界が張られているとしても、外からじゃなく内からなら刺激はないはずだから。…頼んだよ、火影様か羅月に急いで知らせてきて…」

ネズミを見送り、ソッとドアを閉めると、また音を立てないように袋の中へと戻った。

そして、僕達は眠れず決して望んではいない明日を待つ。

空腹で頭が回らないが、意識がない間に体をいじられるのだけは絶対に避けたい。

『(誰か…助けて…)』

神に祈るかのように目を閉じる。

願うは、奴がこの部屋に来ないようにと、それは情けなくもまさしく神頼みだった。
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