忍夢と僕・2

□僕とならまるのお使い奮戦記
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しかし、今までの女と違ってやたら体格が大きい。

『(本物の猪に見えてきた…)』

体術は得意だが、果たしてこの女に通用するのかどうか、不安になるほどだ。

『……ならまる!!受けとれぇ!!』

だが、僕は決して馬鹿ではない。

自分にできることと、できないことの判断くらいできる。

目の前まで突進してきている猪相手に、片手が塞がったままでは危険だ。

僕は、卵のパックをシカマルに投げ渡した。

しかし、向こうの方が一足早かったようだ。

鹿「――っ!!柚姫!!危ねぇぇえ!!前を見ろぉお!!」

シカマルの叫びもむなしく、猪に突き飛ばされてしまった僕は、すごい勢いで宙を舞う。

『――っ!!空から落ちてくる僕は無敵だ!!こっちを見やがれ!!デブっ!!』

「でっ!!でぶですって!!??」

デブは禁句だったらしい。

立ち止まった猪は、僕の方を向き鼻息を荒くする。

その隙に、シカマルはレジへと走っていった。

『お前の負けだ、卵は頂いた』

僕はニヤッと笑うと、体を丸め猪の上に落下した。

ゴンッという音と共に、猪はフラフラと倒れ、僕は地面に叩きつけられる寸前でシカマルに助けられる。

鹿「おぉっと!!あっぶねぇ…。柚姫、卵は無事に買えたぞ」

『本当か…。…それはよかった』

どうやら僕は、頭突きをしてしまったようだ。

目が霞んで視界が定まらない。

『ならまる…、これをヨシ…ノさん……に…。ぶふぁっ……』

脳震盪を起こした僕は、だんだんと意識が遠退いていく。

シカマルが何か言っているが、僕の耳には届かない。

卵をちゃんと渡せと伝えたかったのだが、わかってくれただろうか。

ヨシノさん、無事卵を買うことができました。あなたの息子も無傷なので、安心してください。

『(あぁ…、もっと修行をしなければ…)』

たかだか猪一匹に意識をもっていかれるなんて…。サスケに馬鹿にされるに決まっている。

『(…あの三十路め、お前の顔は一生忘れんぞ…)』

そして僕は、意識を手放したのだった。

それから、どれくらい気を失っていたのだろうか。

額に何か冷たいのを感じ、うっすらと目を開けてみれば、何やらシルエットが見える。

『……ならまる?』

ゴツゴツした手に目を細めれば、、シカマルはニコッと笑い、僕の頭をポンポンと撫でた。
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