忍夢と僕・2
□僕とキバと赤丸
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羅《「「…人間の足は遅いな。何度待てばいい…」」》
というのは、呼び出したのはいいものの、今度はイルカ先生とミズキ先生がついてこれなくなってしまったのだ。
『「「すまないが、合わせてやってくれ…」」』
羅《「「そうするしかないか…」」》
スピードを落とした羅月は、渋々ペースを合わせながら走る。
しばらくして、赤い旗が見えてきた。目的地点だろう。
立ち止まった羅月は、しゃがみこみ、僕を背中から下ろす。
『「「ありがとう。また呼ぶかもしれない」」』
羅《「「かまわん、いつでも呼べ」」》
消えていく羅月を見送り、僕は木の下へ移動し座り込んだ。
イルカ先生とミズキ先生は何やら準備をし始め、それを眺めながらゆっくりと目を閉じる。
みんなが来るまで、まだ少し時間がかかりそうだ。
それから、どれくらいたったのだろうか。
顔に違和感を感じ目を開けると、何やら白いモフモフが視界をうめているではないか。
『…おい』
抱き上げれば、それが赤丸だとわかり少し微笑んでしまった。
「あんっ!!」
一声吠えると、僕のズボンに噛みつき、どこかへ連れていこうとする。
『「「…どうした?キバと一緒ではないのか?」」』
「「「こっ、言葉がわかるの!?」」」
『「「…あぁ」」』
嬉しそうに尾を振る赤丸は、いきなり飛び付いてきた。
「「「すっ、すごいや!!キバも言葉を理解してくれるけど、僕達の言葉で喋るのは初めてだよ!!」」」
『「「そうか。…それで、キバは?僕と戯れているところを見られると、怒られてしまうぞ?」」』
何かを思い出したのか、今度は顔が険しくする。
「「「そうだった!!助けて!!キバが大変なんだ!!」」」
周りを見渡すと、イルカ先生とミズキ先生はいない。僕が寝ている間に、どこかへ行ったのだろう。
小さなため息をついた僕は、赤丸の頼みなら断るわけにもいかず、嫌でも立ち上がることとなった。
あまり、キバと関わらないようにしてきたのだ。
登校二日目から喧嘩をして、あれ以来喋ったことがない。
『「「…羅月、来てくれ。緊急事態だ」」』
赤丸を離し、少し後ろに下がると僕の体に風がまとわりつく。
羅《「「…早い呼び出しだな。どうしたんだ?」」》
固まってしまった赤丸を抱き上げ、羅月に匂いを嗅がせた。
『「「こいつの主人のもとまで連れていってほしい。何かあったようだ」」』
羅《「「…乗れ。その犬をしっかり抱いておくんだぞ」」》
黙って頷いた僕は、すぐに羅月に股がった。
しばらく森の中を走っていると、流れの速い川が見えてくる。
岩の上にはイノとチョウジが立っていて、何やら叫んでいた。