忍夢と僕・2
□僕とキバと赤丸
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羅《「「ここだ…」」》
『…おい、赤丸にここまで連れてこられたんだが、キバはどこだ?』
猪「――っ!!キッ、キバが川の中に落ちちゃって!!上がってこないの!!」
蝶「おっ、狼…」
気が動転しているのか、僕の問いに答えてくれたイノに少しだけ驚かされる。
追い返されるんじゃないかと思っていたのだ。
猪「どうしようっ…、ねぇ、どうしたらっ…」
焦りようから見て、かなり時間がたっていると考えられる。
羅月に服を噛んでもらい川の中に顔を突っ込めば、岩の間に足を挟まれているキバの姿。
『…あのままじゃ死ぬな。岩に足が挟まったようだ』
蝶「死っ!!??どっ、どうしよう!!イノ!!」
猪「わっ、私に聞かれてもっ。流れが速いし…――っ!!キバァ!!」
『…チョウジ、できるだけ重い石を探してきてくれ』
蝶「わっ、わかった!!」
『イノは、赤丸をしっかり抱いてろ。川に飛び込まれちゃ困るからな。それから、この袋に空気を入れてくれないか?』
猪「空気と赤丸、空気と赤丸っ」
カバンの中からロープを取りだした僕は、それを自分の体と羅月に巻き付け、しっかりと固定する。
そして、チョウジが拾ってきた石と袋を受けとり、ゆっくりと川の中に足を突っ込んだ。
『(体術で体を鍛えといてよかった…)』
重い石と言ったのは、川の中で体が流されないようにするのと、沈ませるためだったが、いくらなんでも流れが速すぎる。
『(…よし!!)』
大きく息を吸い川に潜った僕は、キバの近くまで一気に潜った。
そして、無事たどり着き空気の入った袋を渡す。
牙「――っ!?」
最初は物凄く驚いていたが、状況を理解したのか、袋を受けとると中の空気を一気に吸い込んだ。
これで息はもつだろう。
川の底は流れが穏やかなため、体に負担はかからないものの、問題はキバの足だ。
『(この岩、クナイで砕けるか?…いや、二人ならてこの原理で動かせるかも。…うん、無理だな。…仕方ない)』
ポーチから包帯を取りだし、キバに目隠しをする。
嫌がっていたが、睨み付けると従ってくれた。
『(…鬼人、手を貸してくれ)』
青い光とともに姿を現した鬼人は、瞬時に状況を理解し岩を退す。
キバに見られるわけにはいかないため、すぐに去っていったが。
足が自由になり、キバをしっかりと抱きしめた僕は、ロープを引っ張り羅月に合図を送った。
体が浮上している間にキバの目隠しを外し、僕の腰に手を回すように促す。
必死なのか、すぐに抱きつき強く目を閉じた。