忍夢と僕・2
□僕とキバと赤丸
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『ぶはぁっ!!はぁ、――っ、げほっげほ……』
牙「おえっ…」
川から引き上げられた僕とキバは、すぐに大量の酸素を求め大きく息を吸い込む。
猪「二人とも無事!!?」
蝶「もう、僕……お腹すいちゃって言葉もないよ」
猪「あんたねぇ!!こういう時くらい、食欲抑えなさいよ!!」
どんなに酸素を吸い込もうと、キバの顔色は良くならない。
それどころか、何度も水を吐く始末。
羅《「「その小僧を乗せろ。かなり体力を消耗している」」》
『「「死ななかったのが奇跡だ。ったく、この阿呆め…」」』
イノの腕の中で赤丸が心配そうに見つめるなか、キバを立たせ羅月に乗るように言った。
牙「…お前も忍犬使いなのか?」
『馬鹿言え、羅月は僕の家族だ。忍犬などではない』
牙「――っ!?そっか…」
僕も羅月に股がり、キバが落ちないようにしっかりと後ろから支える。
『イノ、赤丸を頼む』
猪「わかったわ!!」
そして、羅月はキバの体に負担がかからぬようゆっくりと走り始めた。
集合場所に着くと、すでにみんな集まっており休憩をとっているようだ。
僕達に気がついたイルカ先生は、最初笑顔でこちらに向かってきたものの、びしょ濡れの僕とキバを見た瞬間に血相を変える。
海「なっ、何があったんだ!?」
気まずそうに顔を歪ますキバは、言葉に困っていた。
女に助けられた、とは言いにくいのだろう。
『…暇だったから、羅月と散歩に行ったんだ。途中、キバ達を見つけてなんとなく飛び付いたのはいいが、足場が悪くて二人とも川に落ちてしまって…』
海「…お前達、仲良かったんだな!!」
牙「あっ、当たり前だろ!!同じクラスなんだぜ!?」
イノはジト目でキバを見るが、本人はそれどころではない。
必死に誤魔化しているし、イルカ先生なんて涙目だ。
それからしばらくして、グループごとに食料を集めに行くことになった。
先生に見せるようにと言っていたが、毒物がないか確認するためだろう。
だが、羅月から下りたキバは、なかなか動こうとはしない。
それどころか、先に行ってしまったイノとチョウジの背中を見たり、僕の顔を見たりしている。
『…置いていかれるぞ?』
牙「えっ!?そっ、その……あれだ!!…何て言うか、たっ助かった!!ありがとなっ!!赤丸!!行くぞ!!」
「「「ありがとう!!」」」
今日は驚かされてばかりだ。
『(まさか、礼を言われるとはな…)』
キバの背中に軽く手を振り、また羅月と共に森へと足を踏み入れる。
今日はあまり休憩できないらしい。