忍夢と僕・2

□僕とストーカーとおやつ
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「ありがとう。名前は?」

『柚姫だ。そちらは?』

「…太郎」

『本気で言っているのか?』

「あぁ…」

怪しい、怪しすぎる。

いや、本当に名前が太郎だとしたら、彼の親に失礼じゃないか。

『…和菓子は好きなのか?』

「好きだ!!大好物だ!!…す、すまない。取り乱してしまった…。なんせ、久しぶりなものでな」

『き、気にするなυ』

やっぱり怪しい。

「…悩んでるのなら、この昔ながらの団子ってやつを頼んでみろ。舌がとろけるぞ」

『本当か!?ならそれにしよう!!すいませぇん!!昔ながらの団子二つ下さい!!』

「あいよっ!!」

太郎さんのおかげで、やっと注文ができた僕はまだかまだかとそわそわしていた。

『そんなに美味しいのなら、太郎さんも一緒に食べよう』

「一つは俺の分だったのか。すまないな。…柚姫はこの里の住人なのか?」

『…滞在しているだけだ。太郎さんは何度か来たことがあるのか?』

「あぁ。たまに立ち寄る程度だが、ここには必ず来る。…思い出の品もあるのでな」

『それが、昔ながらの団子?』

「そうだ。前までは2人で食べていたんだが、今は音信不通といったところだ。元気でいてくれればいいが…」

そう言うと、太郎さんは静かに目を閉じる。

本当に大切な人なのだろう。

『また、会えるといいな。忘れられない人なんだろう?』

「…俺の命より、大切な人だよ」

それから、僕と太郎さんは色んな話をした。

太郎さんの旅の話はどれも面白くて、何度腹を抱えたかわからないほどだ。

そして、たまに会話にでてくる大切な人は、話からして古い付き合いであることがわかった。

幸せそうに話す太郎さんだが、きっと頭の中では思い出が駆け巡っていることだろう。

「…だいぶ長話をしたな。今日はありがとう。また会えたら、話し相手を頼んでもいいか?」

『僕でよければ構わないぞ。団子は本当に美味しかった!!』

「喜んでくれてよかったよ。お土産を買うんじゃないのか?」

『わ、忘れるとこだった!!』

太郎さんが勧めてくれた昔ながらの団子は、今まで食べたことがないような、なんとも言えない団子だった。

前に、羅月に焼き肉の土産を持って帰るのを忘れ怒られたことを思い出し、埋め合わせにはならないだろうけど、団子をあげようと思ったのだ。

「はいっ、落とさないように気を付けるんだよ!!」

『ありがとう!!』

店の人から団子を受け取り急いで外に出たが、太郎さんの姿はどこにも見当たらない。

『…なんだ、帰ったのか』

別れの言葉もなしに、もう旅に出てしまったのか、それとも宿泊しているのかはわからないが、少しばかり残念だ。

空を見上げれば、うっすらと暗くなってきている。

しっかりと団子を抱きしめ、僕はナルトの家に走って帰った。
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