短編

□Loneliness
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耳に入る肉を切る音や悲鳴―…否、断末魔。

我の着ている緑が主色の武装は、

自分の血と返り血が混ざり赤く染まっている。

足元には無数の傷を負った屍達。

腐りかけているそれらが足で踏む度に、

グチャグチャと気色悪い音を出す。


そして数m先に在る紫。

銀髪で左目を紫の眼帯で隠している、自分とは1回り2回り大きい身体。


「・・・長曾我部・・・・・・」


長曾我部元親。

地面に倒れている彼の視線は橙色に染められた空に向けられている。

腹には大きな傷から大量の血が流れ出し、致命傷だろう。


「・・・もと・・な、り・・・。」


我の名を消えそうな声に言う。

肩で息をしている彼は、今にも息絶えそうな状態だった。


「・・・なんだ。」


「勘違い・・・すんな、よ・・・?
お前は独りじゃ、・・・な、い・・・。」


何で今更、そんなことを言うんだろう。


「俺が、昔か・・・・一緒だった・・・・じゃねぇか・・・。

・・・守ってや、る。・・・今も・・・これ・・・も・・・」


我の返答を待たずに、ただ独り言のように言う。

彼の倒れている近くに膝をつき、手前にあった手を握る。

その力はいつも以上に弱々しい。


「・・・馬鹿者が・・、そんななりのお前に、言われなく・・ない・・・」


弱々しく、聞こえるか聞こえないか分からないぐらいの声を出すとともに、

顔を俯かせて見えないようにする。

肩がカタカタと震え、ふいには頬を温かいものが流れた。


「・・・馬鹿はお、前・・・だ・・・。馬鹿やろ・・・・・」


語尾が聞こえない。

元親の顔に視線を向けると、それは青白く、視線は我を向いていた。


「我を・・・置いていくのか。・・・元親。」


そう言っても答えは戻ってこない。

でも視線は未だに元就にある。

声が出せないらしい。

ふと、彼の口が動いた。


―――ごめんな。


止まりかけていた涙は、また溢れて流れる。


流れたそれは元親へ。






Loneliness
(元就…ごめんな。)(……馬鹿者が…)



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