短編
□...初恋月...
1ページ/2ページ
空は真っ暗に、星は所々に点々と。
中心には眩しい程に綺麗な三日月が、草原の中の2人を照らす。
異常に静かな空間で、1人の少年が口を開いて沈黙を破った。
「・・・佐助。某はどうすれば良いのだろう・・・」
佐助と呼ばれた青少年が、1回り2回り小さい少年に問いだす。
「旦那・・・?どうすればって・・・?」
修飾語のない主に、佐助はどう答えれば良いのか、分からないのだ。
真っ暗の空より少し薄い色素の雲が出てきた。
「あの女子が某の前からいなくなってから、結構経っている。
・・・なのに、何故忘れることが出来ないのだろうか・・・。
モヤモヤとする・・・これは何なのだろうか・・・。」
――これは、旦那に春が来たのかな?
佐助が仕える主"弁丸"・・・否、真田源次郎幸村に、まさかこんな早く来るとは思ってはいなかった。
色恋沙汰には疎いだろう主だ。
早くても、初恋は13,4歳ぐらいだと思っていた。
――『弁丸ぅっ!!お団子買ってきたから、一緒にどう?』
――『幸村ったら、昔は泣き虫だったのに、こんなに強くなったんだね・・・』
昔はまだいた少女の言葉1つ1つが、記憶となって脳裏に映し出される。
幼名である"弁丸"から"幸村"へと変わって。
幸村はもう傍にいる筈のない少女がいなくなっても、強くなり続けた。
それでも、少女のことを考えなかったことはないだろう。
気づけば幸村は、いつも脳裏に少女の笑顔があった。
「・・・会えると良いね、旦那・・・。」
「・・・・・・そう、だな。」
どうか、主の初恋が叶うように、と・・・――。
...初恋月...
アトガキ→
.