短編

□...初恋月...
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空は真っ暗に、星は所々に点々と。


中心には眩しい程に綺麗な三日月が、草原の中の2人を照らす。


異常に静かな空間で、1人の少年が口を開いて沈黙を破った。



「・・・佐助。某はどうすれば良いのだろう・・・」


佐助と呼ばれた青少年が、1回り2回り小さい少年に問いだす。


「旦那・・・?どうすればって・・・?」


修飾語のない主に、佐助はどう答えれば良いのか、分からないのだ。


真っ暗の空より少し薄い色素の雲が出てきた。


「あの女子が某の前からいなくなってから、結構経っている。

・・・なのに、何故忘れることが出来ないのだろうか・・・。

モヤモヤとする・・・これは何なのだろうか・・・。」


――これは、旦那に春が来たのかな?


佐助が仕える主"弁丸"・・・否、真田源次郎幸村に、まさかこんな早く来るとは思ってはいなかった。

色恋沙汰には疎いだろう主だ。

早くても、初恋は13,4歳ぐらいだと思っていた。



――『弁丸ぅっ!!お団子買ってきたから、一緒にどう?』


――『幸村ったら、昔は泣き虫だったのに、こんなに強くなったんだね・・・』



昔はまだいた少女の言葉1つ1つが、記憶となって脳裏に映し出される。


幼名である"弁丸"から"幸村"へと変わって。


幸村はもう傍にいる筈のない少女がいなくなっても、強くなり続けた。


それでも、少女のことを考えなかったことはないだろう。


気づけば幸村は、いつも脳裏に少女の笑顔があった。



「・・・会えると良いね、旦那・・・。」



「・・・・・・そう、だな。」



どうか、主の初恋が叶うように、と・・・――。







......




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