隣にいる者1

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朝から佐為と二局打った後、外に出たヒトミ。
冷たい風が吹くたびに身を縮めて歩く

『今日も楽しかったですね』
『確かに楽しいけどさ、一回くらいは勝ちたいな』
『まだ、ヒトミには早いですね』
『こっちの世界だと、私はどれくらいの強さなの?』
『そうですね……、私が知っている塔矢よりは強いですね』
『塔矢アキラか』
『おそらく緒方さんにはまだまだ届かないくらいでしょう』
『なるほど。じゃあ佐為と
いっぱい打って強くならないとね』
『私もヒトミと打って強くなりますよ』
『じゃあ、差が縮まらないね』
『ふふっ、そうですね』

優雅に笑うこの人物を倒したいと思うがまだ先になりそうだ。
しかし、自分がまだまだ強くなれるということに喜びが溢れてくる。

『あれ、本屋ですか?』
『うん。海王中の過去問でも買おうと思って』
『過去問ですか?』
『そう。去年とかその前に出された問題が載っているのよ』
『それはいいですね』
「海王、海王っと」

結構大きな本屋なので、たくさんの中学の過去問が並んでいる。
学校名順に並んでいるのですぐに見つけることができた
過去問を手に取り、レジに向かっている途中
ある雑誌が佐為の目にとまった

『あ、これ。囲碁ができる箱ですよね?』
『ああ、インターネットね』

パソコンが表紙に描かれている雑誌を佐為が指をさしていた。
その雑誌はワープロの説明の本だったので、
囲碁については全く書かれていないが、
インターネットで囲碁ができることを思い出させてくれた。
パソコンはヒトミの父の部屋にあるため、
許可を得れば使わせてもらえるだろう。

『やりたい?』
『はい!』
『じゃあ帰ったらお父さんに頼んでみるよ』
『ありがとうございます!』

ニコニコしている佐為は
落ち着きなくかおりの周りを歩きだした

『楽しみですね。ああ、またたくさんの人と打てます!』

これはインターネットが使えない日が大変になりそうだ。
ヒトミと打つのが楽しいと言っているが、
他にもたくさんの人と打ちたいだろう

(これは碁会所に行った方がいいかもしれないね)




































「ワールド囲碁ネット、よしこれだ」

昨日に引き続き父が休みだったため
家に帰った瞬間聞いてみると、
パソコンを使うことを快く了承をしてくれた。
買ってきた問題集を机の上に置き、すぐに父の部屋に移動して
ワールド囲碁ネットの画面を出した

「私、インターネットで囲碁をするのが初めてだから、
肩慣らしのために先に私が打ってもいいかな?」
『もちろんいいですよ』
「ありがとう。えっと、最初に登録名とパスワードを決めるのね」

登録名をgogoにして、パスワードも決め、忘れないようにメモをした

「さて、誰と打とうかな。取り合えずJPNよね」

JPNとはJAPAN。日本のことで、
この囲碁サイトは海外の人とも打てるので、
国名が記されている欄がある。
まずは日本人の方が安心できる気がしたので
目についた名前を選び、対局を申し込んだ

「よし。勝つぞ!」
『頑張ってください』















































ヒトミは中押しで勝ち、やり方もよくわかったので、
新たに佐為のアカウントを作成し、好きなだけ佐為に打たせた。
ちなみに佐為の登録名はfujiである。”ふじわら”の”ふじ”だ。
久しぶりにたくさんの人と打てて
佐為は満足そうにしていた



2014/6/2


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