隣にいる者1

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ヒカルに会い、彼が碁を打つことが
わかった佐為はとても喜んでいた。

自分がいないのに、碁を打つということは、
ヒカルは碁に興味があるということ。
佐為の事を覚えているということだ。
それがわかってから囲碁サロンに行かずに
ずっと佐為と打っていたヒトミだが、
昨日の夜にアキラから何で来ないんだ
という内容の電話がかかってきてしまい、
春休み最後の今日は囲碁サロンに行くことにした。

「こんにちは」
「ヒトミちゃん!やっと来たわね」
「やっとって、4日ぶりだよ」
「毎日来ていたのに急に来なくなったら心配するわよ。
アキラくんもずっと待っていたんだから」
「随分懐かれちゃったな」
「懐かれたって、ヒトミちゃん…」
「間違ってる?」
「そういうわけじゃないけど…はぁ」

アキラが同い年の子と
とても仲良く話しているのを初めて見た市川は、
ヒトミに感謝をしていた。

今まではアキラが一番歳が近くて
仲が良いのは芦原だったのだ。

やっと同い年で碁を打てる友達ができたことの喜びもあるが、
どうにかしてヒトミとアキラをくっつけようとしている。

まだよく話すようになって1ヶ月も経っていないが、
ヒトミがどういう子か分かってきた市川。
ヒトミにならアキラを託しても大丈夫だという思いと、
なによりヒトミと話しているときのアキラが
とてもいい表情をしているのだ。
これはもう後押しをするしかないと思っているのだが、
当の本人達はそんなことを全く考えていないので困っている

「ねえ、ヒトミちゃん。今好きな人っている?」
「いないよ」
「じゃあ気になる人とかは?」
「……緒方さん」
「え!?」
「冗談だよ」
「なにそれ、笑えないわよ」
「だって、市川さんの考えてること丸分りだから。
無理だよ、私も塔矢も今は碁にしか興味がないから。
すみませーん、誰か打って下さい」
「じゃあ私と打とう」
「広瀬さん。お願いします」
「……あの子、何歳よ」

碁会所の常連である広瀬と
仲良く話ながら席に着いているヒトミを見ながら、
市川は頬杖をついて、呆れながら呟いた。

「こんにちは」
「あ、アキラくん。ヒトミちゃん来てるわよ」
「ホント!?」
「でもちょっと来るのが遅かったわね。もう囲まれているわよ」
「あ、仕方ないね」

ヒトミは教えるのが上手いと評判がよく、
アキラがいないと直ぐに客のおじさん達に囲まれてしまう。
それは今日も例外でなく、しかも4日ぶりということで
いつもにまして人に囲まれており、
アキラがいる位置からは見えないくらいだ

「今日は何人待ちかな?」
「あ、ねえアキラくん」
「何?」
「明日の入学式の後ヒトミちゃんを連れてきてほしいの」
「わかったけど、どうして?」
「二人の制服姿をおさめたくてね」

そう言って写真を撮るポーズをする市川に苦笑い。

ヒトミちゃんは嫌がるだろうなと思ったが、
共に写真を撮りたいという気持ちがあったので
連れて来ることを約束し、
おじさん達に囲まれているヒトミの元へと行く。

アキラが側まで行ったとき、
ヒトミは広瀬に丁寧に説明をしていた。
ヒトミの説明を聞くのはアキラにとっても
とてもためになるので真剣に聞いている。
そんなアキラに気付いたヒトミがニコッと微笑み、アキラも笑う。
美男美女の笑顔は目の保養で、おじさんたちも嬉しそうだ

「アキラ先生、代わりますよ」
「え、皆さんヒトミちゃんと打ちたくて待っていたんじゃ」
「久しぶりに来たんだ。若先生が先に打っていいよ」
「二人の対局を見ているのも勉強になるし」
「ほら、座って」
「すみません。ありがとうございます」

立ち上がった広瀬に座らされた後に礼を言う。
そして直ぐにヒトミの方に向き、打つ気満々のアキラ。
四日ぶりのヒトミとアキラの対局は
ヒトミの中押し負けで終わった





2014/11/13


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