隣にいる者1

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「ねえ、見てあれ」
「うそ?海王の制服?」
「何で?」

『うわ、凄く注目集めてる』
『懐かしいですね』
『懐かしいってそんな前じゃないでしょ』
『そうですけどー、
あっ外から行くのならこっちですよ』
『案内がいてくれて助かるよ』

なんと今日、ヒトミたちは葉瀬中に来ていた。
その理由はあかりに来てほしいと頼まれたからだ。

葉瀬中には一回行ってみたかったし、
また三谷と打ちたいと思ったから
ヒトミは来ることにした。

まあ一番の目的はヒカルが
この後どのように行動するのかが気になったからだ。

「お、いるいる」

窓の外から中を覗く。
まだ誰もヒトミには
気付いてないので、ノックをしてみた。

「ヒトミちゃん!来てくれたんだ!」
「お邪魔します」

あかりが気付き、窓を開けてくれたので
ローファーを脱ぎ、平然と中に入った。
そんなヒトミにヒカルたちは開いた口が塞がらない

「あかりちゃんに頼まれて碁の指導に来たよ」
「はあ!?」
「強力な助っ人でしょ?
ヒカルだって強い人と打った方がいいだろうし」
「南条、お前オレと打て」
「うわっと、三谷?」

三谷に腕を引っ張られ、
座らされて勝手に三谷が黒を持ち打ち始めた

「あかりちゃんいいの?」
「もちろん!じゃあヒカルは私たちを教えてよ」
「待てよ。オレと打つために
連れてきたんだろ?何で三谷と打つんだよ」
「進藤とは後でね。
三谷とはあまり打てないからいいでしょ?」
「オレだって前に打ったのはあの碁会所だぜ」
「まあまあ、進藤とはのちに打つ機会が増えるでしょ」
「仕方ねえな。おいあかりたち打つぜ」

ヒカルがあかりともう一人の女子部員である
津田の方に行ったので、
ヒトミは三谷と向きあい打ち始めた。

「おまえさ暇人なの?」
「はい?」

打ちながら話しかけてきた三谷はヒトミを見ずに
碁盤から目を離さずに聞いてきた

「進藤は1月の院生試験を受けるって言ってた。
お前もプロになる道に行かねぇのかって言ってんの」
「私院生だよ」
「はあ!?」

三谷の大きな声で
皆は不思議そうにヒトミたちを見た。
そして三谷が驚いた理由を知りたく、
ヒカルが代表してどうしたと聞いてきた

「こいつ院生だとよ」
「おまえ院生なのか!?」
「この前院生試験を受けてきて合格したんだよ。
だから通うことになるのは来月から」
「南条が院生?」
「ダメだった?」
「いや、ダメじゃないけどよ……」
「ならいいじゃん」

ヒカルが何かを考え始めたので、
ヒトミは三谷に向き合って打つのを再開した


































「ヒトミちゃん、本当に今日はありがとう」
「ううん、呼んでくれてありがとう。楽しかったよ」

三谷と打った後、ずっとヒカルと打っていたら、
あっという間に部活の時間が終わってしまった。
一緒に碁盤の片づけをしているときに
あかりに感謝され、笑顔になった。

「よし、片付け終了。帰ろうか」

あかりたちに続いて理科室から出ようとしたら
後ろに引っ張られ、動くことができなかった。

ヒトミの後ろにいたのはたった一人しかない。
ゆっくり後ろに振り返ると、
ヒトミの服の袖を掴んだまま俯いているヒカルがいた

「ヒトミちゃん、ヒカル
出ないと鍵が閉めれないよ」
「進藤?」

理科室の中から出て来ない
ヒトミとヒカルを不思議そうに三人は見る

「……鍵はオレたちが閉めておく。
おまえらは先に帰れ」
「何言ってんの?一緒に帰ろうよ」
「どうしても南条に言いたいことがあるんだよ。
聞かれたくねえし」
「……藤崎、津田行くぞ。進藤鍵は付けておく」
「ちょっと待って!三谷くん!」

あかりと津田を引っ張って行ってしまった三谷。
三人の足音が完全に聞こえなくなってから
進藤はヒトミの袖から手を離した。

『佐為』
『ヒカルはいったい何を
言おうとしているのでしょうか』

「進藤、どうしたの?」
「オレさ、今まで一人でずっと
考えていたことがあったんだ」
「うん」
「でも、ある時さ
友達を頼ってもいいって言われたんだ。
だからおまえに聞いてほしいことがある」
「私じゃなくてあかりちゃんや
塔矢の方がいいんじゃないの?」
「おまえがいい!
おまえなら全部受け止めてくれる気がするんだ」
「私も進藤に言いたいことがある」
『ヒトミ!まだヒカルは!』
「でも、まだ早いんだ。
進藤もさ、それを今私に話していいの?」
「ああ。怖いけどな」
「ごめん、進藤。今は聞けない!」
「南条!」

ヒトミは逃げ出した。
走って走って、学校を出たところで、
後ろを振り返ると
ヒカルは追ってきていないようだったので足を止めた

『ヒトミ……』
『進藤の話を聞いたら、
私も言わないといけない気がする。
でも私にはそんな勇気はない。
やっとわかったよ、なんで進藤たちに言えないのか。
怖いんだ。私はこの世界にいなかったから。
私の存在を否定されたらって考えたらさ』

「ははっ、弱いな」

乾いた笑いが出てしまった





2015/02/27



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