隣にいる者2

□44
1ページ/1ページ




「なあ、伊角さん」
「何?」
「最近さ南条のヤツ、本田さんたちといること多いくないか?」
「確かにそうだな、今も本田たちといる」

伊角とともに大広間に入った和谷は
ヒトミと本田、飯島、小宮が話しているのが目に入り、
伊角に聞くと肯定が返ってきた

「行ってみるか?」
「うん、南条!」
「ん?あ、和谷、伊角さん、おはよう」
「おはよう」
「なあ南条、最近本田さんたちといること多くねえか?」
「うん。多いよ」
「何でだ?」
「え?話したいから?」

何で一緒にいるかなんて聞かれても、
理由があって一緒にいるわけではないので、答えづらい

「何だ和谷、南条をとられて寂しいか?
おまえべったりだったもんな」
「寂しくねえし、べったりもしてねーよ!」
「そうか?」
「そうだよ!」

兄にたてついている弟のような和谷が
かわいらしくて、微笑ましくて、見守っているヒトミ。
そんなヒトミの視界に奈瀬が入ったため、
手を振ると、近づいてきた

「何やってるの?」
「弟が兄にくってかかてる」
「誰が弟だ!」
「和谷が弟か、いいかもな」
「オレはよくない!」
「うわああああああん!ヒトミちゃーん!!!」
「おっと、フク、どうした?」

和谷が小宮にくってかかっているのを見ていると
勢いよく自分に抱き付いてきた
フクを慌てて受け止めて、
いったいどうしたのか聞く。

和谷たちも不思議そうにフクを見る

「さっき、棋院の前で転んじゃったー。痛いよぉー!」
「あ、血が出てるじゃない。
少し砂利も交じってっるし、
ほら洗いに行くから立って」

先にヒトミが立ち上がり、
手を差し出すが、フクは首を横に振る

「どうしたの?」
「痛くて歩けない」
「おまえ、ここまでどうやって来たんだよ」

呆れて言った和谷の言葉に
その通りだと伊角たちが頷く

「ヒトミちゃーん」
「はいはい」

両腕を自分に向けているフクを抱き上げる

「ほら、行くよ」
「うん!」
「アイツ、すげー」
「いいな、フクは」
「え、小宮くん?」
「ん?」

残されたみんなが小宮に変な目を向けているとき、
ヒトミはフクと共に女子トイレに入り、
水道で怪我した膝を洗っていた

「痛い……」
「我慢して」
「うん」
「…………よし、大丈夫」
「ありがとう!」
「拭くからジッとしてて」
「わかった」

ポケットからティッシュを出して軽くふき、
天元の間に移動し、カバンから絆創膏を出して貼った

「よし、これで大丈夫だね」
「ヒトミちゃん、お母さんみたい」
「え?」
「和谷くーん!伊角さーん!」

走って和谷たちのところに行ってしまったフク。
残されたヒトミはお母さんと言われたことに唖然としていた

『佐為、私ってお母さんみたい?』
『フクくんからはそう見えてしまうのでしょうね』
『せめてお姉さんにしてよ』
『ふふふ、頼られている
ということでいいんじゃないですか?』
『うーん、複雑』

そんなことを言いながら大広間に戻ったのだった





2015/03/02



43へ/目次へ/45へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ