隣にいる者2

□55
1ページ/1ページ




「ちょっといいか?桐条」
「えっ、伊角くん!?」

ここは伊角の高校。
休み時間に伊角は桐条という女の子に声をかけ、
人気のないところへ移動した

「キミの両親って宝石店を営んでるよな?」
「う、うん。そうだけど」
「これと似たようなネックレスで安いのあるか?」

伊角は携帯を開き、
ネックレスの写真を見せた

「これ、ブランドものじゃない」
「ああ。誕生日プレゼントを渡したいんだけど、
これは高すぎるからさ」
「……彼女さんにプレゼント?」
「い、いや違うって!南条は彼女なんかじゃ!」
「ふーん、南条さんって言うんだ」
「あ……」

口を慌てて抑えるが、もう遅い

「いや、本当に彼女じゃないから」
「じゃあ好きな子?」
「違うって!南条は友達」
「友達にネックレスをあげるの?」
「この前、一緒に店に行ったとき、
それを欲しそうだったからさ、
あげたら凄く喜んでくれるだろうし」
「ふーん……いいよ」
「ありがとう!」
「ただし! 」
「え?」

喜んだのも束の間、
桐条は条件があると言い出した

「条件ってなんだ?」
「私の彼氏になってよ」
「ええっ!?」
「いいでしょ?」
「それはちょっと……」

どんどん押してくる桐条に伊角はタジタジ

「あはは!冗談だよ」
「冗談に聞こえないよ」
「ごめんごめん、
でも仮の彼氏にはなってほしいんだ」
「仮の彼氏?」
「そう」

桐条が言うには、
他校の男子に付き合ってくれと言われて
困っているらしい。

何回も断っているのにも関わらず、
全く諦める気配がないようで、
自分に彼氏ができたら諦めてくれるという魂胆だ

「別に、オレじゃなくても」
「なに言ってるの!
伊角くんみたいにカッコいい人だったら、
諦めがつきやすいじゃない」
「いや、それは……わかった」
「ホント!?ありがとう」

困っている人はほうっておけない。
そして、ネックレスを手に入れるためには
仕方のないことだった

「ネックレスのことなんだけど、
いくらくらいまでならいいの?」
「3千円くらいかな」
「3千円ね。わかったわ、
親に聞いていくつか用意をしてもらう。
いつまでがいいい?」
「南条の誕生日が再来週の月曜日なんだ。
だから、できればその日までにはお願いしたい」
「わかった!任せてよね」
「ありがとう」

いい子だなと思いながら
伊角はお礼を言ったのだった。








































次の日、桐条が学校に
何個か候補のネックレスを持ってきた

「どれにする?」
「うーん、どれがいいかな?」
「こういうのは伊角くん自身が決めた方がいいわよ」
「オレ、こういうのよくわからないんだよな」

伊角が3つのネックレスを見ながら
どれがいいか決めかねていると、
クラスメイトが次々と集まってきた。

仕方ないだろう。机の上にネックレスを広げ、
それを見ながら伊角が悩んでいるのだから

「どうしたんだよ、伊角」
「愛しの彼女さんへの誕生日プレゼント選びよ」
「えー!!伊角くん彼女いたの!?」
「おい、いったい誰だよ」
「だから違うって。彼女じゃなくて友達!」
「なーんだ、つまんねーな」
「悪かったな」
「友達の誕生日プレゼントねー。
この中から選ぶの?」
「うん、どれがいいと思う?」
「この中なら、これでしょ」

指を指したのは真ん中にあるネックレス

「やっぱりそうよね。
実はね、これ伊角くんの予算オーバーなの。
でも、これが見せてもらった写真に
一番雰囲気が似てるから持ってきちゃって」
「予算オーバなんて気にすんなよ。
大切な友達なんだろ?」
「……」

男友達に肩を組まれながら言われた言葉を
心のなかで呟きながら悩む伊角

「……いくらなんだ?」
「8千円」
「4千円か……和谷は無理だろうな」
「和谷?」
「友達。和谷と割り勘で
買おうとしてたんだけど、あいつまだ中学生だから」
「あー中学で4千円はキツいな」
「バイトをやってないオレもキツいけどな」

どうするかと悩んでいる伊角を見ながら、
仕方ないわねという表情をして桐条が口を開いた

「……仕方ないわね。
5000円にしてあげるわ。
伊角くんには私のお願いを聞いてもらうんだし」
「え、悪いよ」
「まさか、タダで安くするわけないわよ。
その南条さんって子の写真を
見せてくれたら5千円にしてあげる」
「南条の?」
「そう」
「何でだ?」
「気になるからよ、
伊角くんと仲がいい女の子なんていないでしょ?」
「いや、いないってわけじゃないよ」
「でも、南条さんが女子では一番仲がいいでしょ?」
「……まあそうか」

学校でも何か用があるとき以外は
ほとんど女子と話さない伊角。
どうでもいいことを
話せる女子といったらヒトミや奈瀬くらいだ

「皆で写ってる写真ならあるけど」
「見せて!」
「オレにも!」
「おまえに見せる必要ないだろ。ダメだ」
「ちぇー」

この前仲の良いみんなで撮った写真を
現像してそのままカバンに入れっぱなしだったため
それを取り出し見せる

「一番前の真ん中にいるやつだよ」
「中学生?」
「ああ」
「……なんか、将来が楽しみな子ね。
今も十分可愛いけど、あと3年くらいしたら、
凄く綺麗になりそう。伊角くん!今のうちにキープよ!」
「キープって……」

そっちにどうしても繋げようとするので、苦笑いが出た。

「じゃあ、これは5千円で売るわ」
「ありがとう」
「あと、付き合ってもらうの明後日で大丈夫?」
「明後日はちょっと……」

明後日は日曜日。院生研修の日だ。

「じゃあ、来週の日曜日は?」
「日曜日はいつも無理なんだ」
「それは困ったわね。
私、日曜日しか空いてないのよ」
「えっ……」

伊角は絶対に日曜日は院生研修があるのでダメ。
しかし、桐条は日曜日でなければいけないと言う

どうすればいいのか困り、
しばらく悩んだ後答えを出した

「……仕方ないか、そっちに合わせるよ」
「ごめんね、ありがとう。
じゃあ来週の日曜日、11時に新宿でいいかな?」
「わかった」

午後からとかならば、
午前中は院生研修に出ることができたが、
微妙な時間なため、無理だなと諦めたのだった






2015/03/07



54へ/目次へ/56へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ