隣にいる者2

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『行かないんですか?』
『私はもう部外者だからね』

佐為と話しながらたくさんの人に
囲まれている岸本と日高を見る。

今日は卒業式。先ほど式自体は終わり
ヒトミは岸本や日高に
卒業おめでとうの言葉を伝えるつもりだったのでが、
囲碁部員に囲まれている二人を見るとどうにも近寄れない

『やめようかな』
『いいのですか?』
『途中でやめた人より、
長い間一緒にいた人と話していたほうがいいだろうし』
『そうかもしれなせんが……』

そんな話しをしていると、
視線に気づいたのか岸本がこちらを向いた。
そして隣にいる日高の肩を叩いてからこっちを指さした。

そのことにより日高も私に気付き、
岸本と共にこっちにやってきた

「ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう」
「ありがとう。塔矢は?」
「すみません、知りません」
「えーなによアイツ。私たちになにも言わないつもりかしら」
「あははは」

恐らくアキラは何も言わないつもりだ。
部をひっかきまわし、
すぐに出て行った自分など
おめでとうの言葉を言う資格がないと考えているのだ

「南条、この後時間はあるか?」
「はい、あります」
「なら打ってくれないか?」
「え」
「じゃあ私もお願い」
「私でいいんですか?」
「ああ」
「本当なら塔矢がよかったんだけどね、
プロに打ってもらえるなんていい機会だし」
「すみません」
「謝らないでよ、じゃあ早速部室に行きましょう」

ずっとこちらを見ていた部員に手を振り
ヒトミと共に部室へと向かう岸本と日高。

一方ヒトミは何で自分と打ってほしいなんて
言ったのかを考えながら二人の後を追った

「お二人を相手に二面打ちですか?」
「だってあまり時間ないし、一気に打っちゃった方がいいでしょ」
「そうですけど」
「南条」
「あ、はい」
「今院生は何位だ」
「え、この子院生なの?」

実は尹から聞いていたため
岸本はヒトミが院生であることを知っていた。

昔自分も院生だった。
しかし、一回だけ一組に上がったが
他はずっと二組で自分の実力がわかったのか
一年ちょっとで辞めてしまった。

そんな自分が辞めてしまったところにヒトミがいる。
純粋に気になっていたのだ。
彼女が院生でどのくらい通用しているのかを

「えっと今は一組の二位かな。
一位がお二人とも知っていると思いますが、
葉瀬中の進藤ヒカル」
「あの子塔矢に勝っておいて院生なの!?」
「ええ」
「……キミは伊角さんより上なのか」
「伊角さんには勝ったり負けたりですよ」
「……」

黙り込んでしまった岸本にどうしたらいいか戸惑い、
日高に助けを求めると、打とうか!と椅子に座った。

それを見たヒトミは日高の前に座り、
岸本は日高の隣に座った

「お願いします」
「「お願いします」」









































(まさかこの二人相手に
二面打ちをする日が来るとは思っていなかったな。
岸本先輩に日高先輩か……
せっかく部活に入ったんだから
もっと先輩たちと話したかったな)

今日で卒業なのでもう学校には来ない。
これから会うことなんてないと考えると
自然とそういう思いが出てくる。

前回は部活なんて入らなかったため
先輩と呼べる人はいなかった。
今更だがもっと話せばよかったと思うと悲しくなる

「負けました」

日高が負けを認め、残るは岸本

(二人とも高校に行っても碁は続けるのかな?
せっかく打てるんだからやめてほしくない。)

「……ありません」
「ありがとうございました」
「ふう、流石だな」

眼鏡のブリッチをあげながらそう言った岸本は片付け始めた。
日高はすでに片付け終わっておりヒトミをじーっと見ている

「ねえ南条」
「はい」
「あなたプロになるの?」
「はい。夏のプロ試験を受けるつもりです」
「頑張りなよ。あんたならなれるよ」
「ありがとうございます」
「南条プロと打ったことがあるんだって
自慢できるくらいになりなさいよ」
「はい!」





2015/03/08



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