隣にいる者2

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「おい、和谷。しげ子とヒトミを起こしてこい」
「え、オレがですか?」
「そうだ」
「……わかりました」

面倒だったが、断れる雰囲気ではなかったので
和谷は椅子から立ち上がり、
しげ子の部屋へと向かった

“コンコン”

「南条、しげ子ちゃん。起きてるか?」
「……」

扉をノックして呼びかけるが、返事が返ってこない
扉に耳を付けて中から音が聞こえてくるか確かめるが、
全く物音が聞こえない

「入るぜ」

中に入ってみると、盛り上がっている布団が二つ。
先に手前側にいるしげ子を起こしにかかる

「しげ子ちゃん、起きて」
「んーまだー」
「朝ごはんできてるよ」
「んー?和谷くん?」
「ほら、起きろ」
「ふわーあ、もう朝?」

上半身を起こし大きなあくびをしながら
伸びをするしげ子

「オレは南条起こしてから行くから、
先に行ってていいぜ」
「わかったー」

眠そうに目をこすり出て行ったしげ子。
和谷は奥で寝ているヒトミを起こそうと近づいた

「おい、南条起きろ」
「……」
「はぁ、南条」
「んー」

まったく起きる気配がないため、
しゃがんで、ヒトミの体を揺らすが、
寝返りを打って和谷側に向くだけだった

「……よく寝てるな。あどけない顔しやがって」
「っん」
「……南条、起きてるか?」
「……」
「おーい」
「……」

和谷がいくら声をかけてもヒトミが起きる気配がない
それをいいことに和谷は言いたいことを言い始めた

「……伊角さんと、何でキスしたんだよ」
「……」
「別に伊角さんならイヤじゃないって、どういうことだよ。
おまえは伊角さんが好きなのか?」
「……」
「なあ、ヒトミ」
「……」
「はぁオレ何言ってんだろ」
「んー」
「あ、起きたか?」
「……えへへ……い…すみ…さん」
「っ……ふざけんな」

ヒトミの口から出た伊角の名前に
もやもやとした黒い感情が出てきて
これ以上伊角の名前を呼んで
笑っているヒトミを見たくなくて――
伊角の名を口にするヒトミの声を
聴きたくなくて、口を塞いだ。


































『ねえ佐為。和谷がなんかおかしくない?』
『え、ええ。そうですね』

朝食の時間、ご飯を食べながら
今朝起こしに来てくれた和谷を思い出す。
ヒトミが目を覚ましたとき、
どことなく和谷の顔は赤く
目を合わせてくれなかった。

それは現在も同じで、目が合ったと思ったら
すごい勢いで逸らされてしまい、
顔を赤くして俯いてしまう

『佐為、何か知ってるの?』
『い、いえ私は何も』
『怪しい』
『私は何もしりません!』
(駄目だな、こりゃ)

佐為が何か知っているということはわかったが、
絶対に教えてくれないので、佐為に聞くことは諦め
再び和谷を見つける

「ねえねえ、ヒトミちゃん」
「ん?どうしたの?しげ子ちゃん」
「和谷くんと何かあったの?」
「し、しげ子ちゃん!?」

和谷にもしげ子の声が聞こえたようで、
慌てて立ち上がった

「だってヒトミちゃんを起こしに行って
こっちに戻ってきてからおかしいんだもん」
「おかしくねーよ」
「本当に?」
「本当だよ!」
「ふーん」

まだ疑っているしげ子だったが
それ以上は何も聞くことはなかったので、
ヒトミも聞くことを諦めた





2015/03/19


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