隣にいる者2

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夏休みに入ってすぐ
碁会所行くけどおまえも来るか?
と、電話で和谷に言われ、
ヒトミと佐為は同時に肯定した

「おーい、南条こっちだ」
「和谷!伊角さん!」

手を振っている和谷に駆け寄る。
隣にはと伊角がいた。どうやらこの3人で行くようだ。

「ヒカルは呼ばなかったんだ。珍しいね」
「なんかネットカフェに行くって言ってたぜ」
「ネットカフェ?またネット碁でも初めたの?」
「さあな、取り合えず碁会所行こうぜ」
「いいところあるの?」
「いいかわかんねーけど、近くにあるからよ。
どうせ行くなら皆で行った方が楽しいと思ってさ」
「遊びに行くわけじゃないんだから、
楽しいとかそういうのはないだろ」
「いいんだよ。こっちだ」

和谷について行き、しばらく歩いていると
前方から見覚えのある人物が歩いてきた。

「かっ……え?」

ヒトミが声をかけようとしたが、
その人はただヒトミの頭に手を置いて
何も言わず去って行ってしまった。

まだ触れられた感覚がある頭を
左手で押さえ、大きな声を出す。

「私もう大丈夫、ありがとう!」

振り返らずに、よかったなとでも言うように
左手を上げた加賀を見てヒトミは笑顔になった。

「誰だ?あいつ」
「公園でボーっとしていた私に話しかけてきた人」
「それは、大丈夫なのか?」
「話を聞いてもらったんだ。
それにヒカルの知り合いだから大丈夫だよ」
「へー進藤のね。まあいいや、行こうぜ」

再び歩き出し辿り着いた場所は囲碁石心という碁会所。
和谷、伊角、ヒトミの順で中に入った

「こんにちは」
「珍しいな子供が来るなんて」
「オレたち打ちに来たんすけど」
「子供は500円だよ」

受付の人に皆は500円を渡し、
対局をしてくれる人を探す

「お譲ちゃん、私と打たないか?」
「いや、わしと打とう。優しく教えてやるぞ」
「ちょっと、たまには私に打たせて下さいよ」

(甘く見られてる。
女が碁ってだけで甘く見られるのは
ほんとイヤなんだよね。
確かに女は男より弱いってされてるけどさ、私は別よ!)

「一番強い人と打ちたいな!」
「うわー」
「ほどほどにしとけよ」

ニッコリと笑いながら言うと、
和谷と伊角に呆れられてしまった。

この二人はヒトミが怒っている理由に
気付いているからそれ以上は何も言わなかった

「では、オレだな」

そう言った男は、神宮寺という
サングラスをかけた男だ。
自信ありげに笑うその人の鼻を
へし折ってやろうと
ヒトミは意気込み対局をすることにした。

伊角や和谷も相手が決まり窓側から
ヒトミ、伊角、和谷と座り
ギャラリーがいる中、対局が始まった






































「……マイッタ、ここまでだ」
「神宮寺さんが負けたよ、おい」
「誰だい?この子」
「アンタ、まさかプロとか言うんじゃねーだろーな」
「いえ、院生です。
横の二人も院生で、今日は誘われてきました」
「ほお、院生かァ」
「ウデだめしかい」

そんな声が周りからあがる中、
ヒトミは碁石を片づける

「フン。オレはなプロに知り合いがいるんだ。
そのプロに言わせりゃ年齢制限が30歳じゃなかったら、
オレだってプロ試験受けられるんだってよ。
その力はあるなんて言ってくれたが、
どうやらおべんちゃらだったらしい。
悪かったな女だからって甘く見て」
「いえ、ありがとうございました」

謝ってくれれば直ぐに許すと決めているので、
ヒトミはもう甘く見られたことを何とも思っていない。

隣を見ると伊角と和谷の検討が終わったようだった

「伊角さん、和谷。終わった?行こうよ」
「そうだな」
「うん」
「ちょっと待ちな。ここの碁会所に行ってみな。
地図書いてやったよ。強えのと打ちてえんだろ」

神宮寺から地図を受けとり、
三人は頭を下げて碁会所を出た。

そして、今日はプロ試験の予選日なので棋院に寄り
今の状況を確認しに行った
飯島は3連勝し、本戦出場決定。
福井、奈瀬の二人は共に
1勝2敗であとがない状態だった





2015/03/20



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