隣にいる者4

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8月下旬、今日からプロ試験本選がスタートする
長い長いプロ試験。問題は体調だ。

それ以外は何も問題はない2子置こうが負ける気はない

「おい、南条ヒトミ!」

荷物を置いて、時間になるまで
前と同じように対局場に入り、
集中しようと座ったとき、
大きな声で名前を呼ばれ上を向くと、
腕を組んで仁王立ちしている男の子がいた

「オレはおまえに勝ってプロ試験に合格する!」
「……」
「おい、庄司!何やってんだよ!すみません!」

最初にやってきてヒトミの名前を呼んだのは庄司。
そして庄司を怒りヒトミに謝ったのは岡という男の子。
彼らは院生でまだ中学一年生。
そして、小学5年生の時に若獅子戦で庄司はアキラと
岡はヒカルと対局をしたことがあった

「あなたたち院生?」
「おう!」
「そう。今院生1位って誰なの?」
「今は福井さんです」
「フクが1位?わーそうなんだ」

ヒトミが高3ということは
今、フクは高校に行っていれば1年生だ
小さいフクのイメージしかヒトミにはなかったので
会ってもわからないかもしれないと考えると面白かった

「ヒトミちゃーあああああん!」
「ぐっ……イッタ!!」

いきなり前から何かが突っ込んできて、
座っているヒトミは踏ん張ることができず
そのまま後ろに倒れ、壁に頭をぶつけた

「やっとヒトミちゃんに会えた!
もう聞いてよ、和谷くんも伊角さんも進藤くんも
ヒトミちゃんに絶対に会うなって言うんだよ!
もう2年ぶりだよ!」
「フ、フク。わかった、
わかったからどいてっ重い!」
「あ、ごめん!」
「もう、変わらないね」

離れたので、やっとしっかりと顔を見れて
フクが全く変わっていないことがわかった。

からだは大きくなっているが
可愛らしい顔はそのままだ。

ありがたいことに性格も変わっておらず、
まだ純粋なようだ。
だからなのだろう、フクが悲しむと思って
和谷たちはヒトミに会わせなかった。
だからなのかフクは、前と変わらずヒトミに接してきた

「ヒトミちゃんも変わってないよ!」
「……どうだろう?」
「変わってないよ!
和谷くんたちがわかってないだけだよ!
今のヒトミちゃんはボクの知ってる
大好きなヒトミちゃんだよ!」
「フク、ありがとう」
「うん!」

フクと話してなごんでいるうちに
庄司や岡はいなくなっており、
時間になったのでクジを引き、
組み合わせを決めた。

言われたところに座っていると前に岡が座った

(初日はこの子か。
初日から負けるのはイヤだと思うけど、ごめんね)

相手がヒトミだということに
緊張でがちがちの岡を見ながら
ヒトミはそんなことを考えていた

「持ち時間は1人3時間。
秒読みは一手1分コミは6目半。
みなさんも知っていると思いますが、
この試験には元プロの南条さんがいます。
彼女の相手の人は2子置いてください」

予選に出ていない人はほとんど知らなかったようで、
ヒトミ相手には石を置くということに
ざわざわし始めたが篠原の静かにしてくださいの言葉で
すぐに静まり、対局が始まった

「よろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」














































「……全勝合格。やっぱり、ヒトミなのか?」
「ヒカル!確かめに行きましょう!」
「そうだな」

ヒトミがプロ試験を受けると聞いてから
ずっと気になっていたが、
ヒカルも佐為も大事な対局があるので
あまり気にしないようにしていたら
いつの間にかプロ試験は終わり、
合格者が発表されており、
その中にヒトミの名前があった。

また自分たちをからかうために
プロ試験を受けたのだったと思ったが
プロ試験に合格し、まさかの全勝。

こんなことをこの世界のヒトミができるとは思わなかった

「でも佐為。ヒトミは絶対に
戻ってこないって言われたんだろ?」
「ええ、ですがヒトミちゃんが
プロ試験に合格できるとは思いません。
それに前にいつもの碁会所に来たヒトミちゃんはいつもと違いました」
「……もしあの時のがヒトミだったら、
オレはなんて言えばいいんだろうな。
あんときのヒトミをまったく信じようとしないで、
ヒドイことを言ってさ。許してもらえないな」
「……そうですね。
ヒトミは優しいですが、今回はムリかもしれませんね。
ですが、謝りましょう」
「ああ!」

許してもらえなくても謝ろうと
決めたヒカルと佐為はヒトミの家へ走った。
途中で同じ考えだったのかアキラとも会い、
共にヒトミの家へ

















































「おーい、ヒトミ!」

インターホンを鳴らすが
まったくヒトミが出てこないので
扉をたたき名前を呼ぶがヒトミは出てこなかった

「いないんじゃないか?」
「ヒカル!探しましょう!」
「そうだな、でもどこにいるんだ?
あいつの行きそうな場所なんて……」
「いつもこの時間は家で私と打っていましたからね、
いったいどこにいるのでしょう」
「進藤!佐為さん!あれ!」

アキラが指さした方向にはヒトミがいた。
そしてその隣には男がいた。
帽子をかぶっているしまだ距離があるので誰かわからない。

そして次の瞬間男からヒトミに抱きていた。
それにヒトミが反抗することはなく、
その男の背中に腕を回した。そして……

それを見てヒカルたちはヒトミの家の前から離れた。
そしてだいぶ離れたところでヒカルが当たるように壁を叩いた

「変わってねーじゃねーか!!」
「……ヒカル」
「彼女はプロになってどうするつもりなんだ!」
「……塔矢」

怒りで震えている二人を見て佐為は
どうすることもできなかった。
ただ、もうヒトミと関わることはやめた方がいいと思った

















































「もう、フクどうしたのよ」
「えへへ、ヒトミちゃんと一緒にプロになれたことが嬉しくて」

たまたま買い物に行った先でフクと会ったヒトミは、
フクを連れて家に帰る途中急にフクが抱き付いてきたのだ。
ちょうどそこをヒカルたちに見られて
誤解をされているなど
ヒトミもフクも知らずに笑い合っていた





2015/05/05


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