猫の短い物語

□水道魔導器奪還編
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「なんとしても止めるんじゃ!」

ハンクス爺さんが、先導切って溢れる水を止めようとしている。

「なんだ?どでかい宝物でも沈んでんのか?」

「ああ、でもユーリには分けてやんねえよ。来んの遅かったから」

「はっはっは、世知辛いねぇ」

「そう、世知辛い世の中なんだよ」

「魔導器修理を頼んだ貴族の魔導士様も、いい加減な修理しかしてくんないしな」

下町の男は、作業の手を休めず言った。

「ユーリめ、やっと顔を出しおったか!」

ハンクス爺さんがユーリに声をかけた。

「じいさん、水遊びはほどほどにしとけ。もう若くねえんだから」

「その水遊びをこれからおまえさんもするんじゃよ」

「げっ」

「さあ、運べ!いっち、に〜……」

ユーリも水を止める為に水に入ろうとしたが、後ろから引っ張られる感覚がして、足を止めた。

「どうした、ラピード」

『(……こい)』

ラピードはユーリを魔核が設置してある筈の場所に連れて来た。

『(よく見ろ……魔核が無くなっている)』

ユーリは暫く考えた後、ハンクス爺さんに話し掛けた。

「じいさん、魔核見なかったか?魔導器の真ん中で光るやつ」

「ん?さあのう?……ないのか?」

「ああ。魔核がなけりゃあ、魔導器は動かないってのにな…最後に魔導器触ったの、修理に来た貴族様だよな?」

「ああ、モルディオさんじゃよ」

「貴族街に住んでんのか?」

「そうじゃよ……ほれ、もういいから、ユーリもみんなを手伝わんか!」

「……悪い、じいさん。用事思い出したんでいくわ」

そう言うとユーリは市民街の入口に向かって歩き出した。

「待て、待たんか!」

ハンクス爺さんはユーリを引き止めた。

「まさか、モルディオさんのところへ行くのではあるまいな」

「貴族様の街に?オレが?あんな息詰まって気分悪くなるところ用事があっても行かねえって」

そう言うと、ユーリは今度こそ市民街に行った。

「まったく……武醒魔導器で術を使えるからって無茶だけはするんじゃないぞ!……また無茶せんといいが……」






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