小説
□月見、花見
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「私の事、ましてや月の事などどうでもいい、早く部屋に帰り休め」
ギロリ、と、音でも鳴りそうな視線でわれを見据える銀髪に
また、ひらりと花びらが降る
「あいわかった…しかし、ぬしもつまらぬ男よのう…われが思うておったと言うに」
疼く肉を少しばかり動かし、ふわりふわりと宙を泳ぎ部屋を目指す
「月にも花にも、興味はなしか…ぬしらしいわ…ひひ」
目前の銀髪を通り過ぎようと思うたが
その銀色に積もる淡い花びらが気になり
すっと手を伸ばした
「三成よ、これは水も滴るというよりは、花も滴る…」
「…なんだ?」
先刻より幾らか落ち着いたその目と合う
その眼に映る、われと、細月
「…なぁに、何という事はない、ぬしは、美しいと言う事よ…」
その銀色に積もる一枚を、痛んだ指先で挟み
はらりと宙に舞わせた
「ふん…くだらん事を…」
そう言うと銀髪をぶるんと大きく振り上げ
積もっていた淡い花びら達は
ひらりひらりと舞い落ちた