小説

□月見、花見
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「刑部」


銀色に追い払われ、舞い落ちる花びらを眺めるわれを

その細月のような眼が見据える


「何度も言われずともわかっておるわ…」



またその細月がつり上がる前にと
この膿んだ肉体をゆっくりと運ぶ

後ろになった三成が、われに背を向けるのがわかった



「…身体が痛んで寝つけぬのだろうが今宵はまだ冷える、私を思う暇があるなら自分を思え」


頭の後ろから意外な言葉が聞こえたと思えば

ひゅう、と夜風が顔を撫で、われを通り過ぎた



「思っているのは私も同じだ」



夜風につられるかのように振り向けば


こちらを見据えた細月と目が合うた
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