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□たまにはこんな、小休息。
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○●○●○●○●○●


「……っちゅー訳で、行くでぇ!花見!!」


「今日はいっぱい楽しみましょうね♪」






美しい花が咲き誇るアシハラの春。



ルカたちは束の間の休息がてらに、アシハラの春の風物詩といわれる《花見》を楽しむことにした。




浮かれる女性陣を尻目に、キュキュはいまいち理解していないようである。

それもそのはず、
キュキュたちの世界には、花見という観念が無い。





「コンウェイ。ハナミ、ってなにか?」


「えと…花見というのはね………花を…………見ることだよ」



「それだけか?」


「ンなわきゃねェよ!」




50点ほどしかあげられないコンウェイの説明に呆れるスパーダ。




「花見っつーのはなァ、主に桜って花ァ見ながら手作りの弁当食ったり、酒飲んだり歌ったり踊ったり、団子食ったりする由緒あるアシハラの伝統行事の事だ」


「まぁ、お花を見ながらの宴会みたいなものね」



スパーダの説明にアンジュが補足する。





「へぇ。(しょーもない事にだけ)意外に博学だね、スパーダくん」


「なーんか褒めてる声色じゃねェな……」



「ハナミ、楽しそう!」

「とっても楽しいのよ、綺麗な花を見ながらのご飯って♪」




盛り上がる4人。

そんな4人を(生ぬるい目で)見つめていたルカとエルマーナだったが、しびれを切らしたイリアの声で我に変える。



「ちょっと、もういいでしょ!?さっさと行きましょうよ!」




イリアの一声で一同はまた歩き出す。





アシハラの山中、桜と呼ばれる木が立ち並ぶ小道を行くルカたち。




小道の両脇には等間隔に植えられた桜が小さく可愛い花を満開に咲き誇らせている。









しばらく歩くと、一際大きく美しい桜の木にたどり着く。


その木の下にシートを広げて座っているリカルドがいた。






「リカルドさん、場所とりありがとうございます」


リカルドはこちらに気付くと憮然とした表情を浮かべる。




「ふん……。まさか花見ごときのために夜から場所とりをさせられるとはな…」


リカルドの態度を不思議に思ったのかアンジュは あら?と、小首を傾げた。


「確か、リカルドさんが場所とりを名乗り出て下さったように記憶しておりますが…?」


「………早く座れ」








「……なんか、リカルドのおっちゃんって父ちゃんみたいやな」


「そうだね。子供の運動会で気合いいれて夜中から場所とりをするタイプ…」

「ラルモ!ミルダ!!早く座らんか!!」









**********



「ほらっ!あたしとスパーダの合作弁当よ!」



しばらくは桜を見つめていた一行だったが、そろそろ飽きてきたのかイリアが弁当の封印を解く。




「あらイリア。待ってました☆」

「やぁっぱ、花見ゆーたらコレやな!」


「キュキュもお腹減た〜!」


「ぐふぐふぐふ…コーダも腹が減ったんだな、しかし」


弁当を前に盛り上がる女性陣(+α)はすぐさま弁当の蓋を開け、食べ始めた。





そんな女性陣を見ていたルカは視線をスパーダに移し、暗い目で睨み付けた。


「酷いやスパーダ。僕が知らない間にイリアと2人きりでお弁当を作っていたなんて……」




「本当かベルフォルマ?…ミルダの気持ちを知っていながら…?」


リカルドからも嫌疑の眼差しを向けられるスパーダ。


「いやいや誤解だって!!イリアがサンドイッチ担当でオレはおかず担当って分けて、それぞれのへやで朝イチに作っただけだよ!」


大慌てのスパーダにコンウェイが助け船を出す。


「彼の言っていることは本当だよ。ボクは明け方からずっと、彼の側に居たから」




ざわっ……





コンウェイの発言に女性陣の食事さえ停止した。





「あれ?ボク、何か変な事でも言ったかな?称号《かばう者》として当然の事を言ったまで。……ふふっ」


「ふふっ……じゃねェよ!!誤解されかかってるぞ!?」


「そうだね。でもボクは称号《静観する者》だから弁解はしないよ?」




「ハァ…。もーいーって」



スパーダは称号

《(自分の)恋の行き先心配人》

の称号を得た









「……というか、明け方までずっと一緒にいたのは否定しないんだ」


「ちっげーよ!明け方"から"一緒にいたンだよ!」


「うん。残念ながら本当だよ。スパーダくんの弁当作りを見てたんだ」




ルカ(残念ながら……?)




「ならば手伝ってやれば良かったのではないか?その方が手っ取り早く終わったろうに」


「それはそうさ。でもスパーダくん、変にプライド高いから……」


気分が悪くなってきたのでルカはこの会話に入るのを止め、女性陣たちの食事に加わることにした。


イリアたちは可哀想な子を見るような目でルカを迎え入れた。
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