My Dream
□第六章
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マジかよ……。
俺は、麻友さんの予想だにしなかった一言に絶句した。
まあ、あんだけ麻友さんの前であたふたしてたら、さすがに気付くか…。
さて、バックレるか、それとも思いきって告白するか…。
「どうなの?」
真剣な表情で聞いてくる麻友さん。
『…………いるよ、好きな人』
俺のその言葉を聞くと、麻友さんは一瞬目を見開いた後、すぐに表情を戻し「そうなんだ…」とだけ言って、また視線を窓の外へ移した。
その後しばらくは、双方共に話をしない時間が続いた。
『あのさ…』
その微妙な空気に耐えかねた俺が声をかけると、麻友さんはそのまま顔をこちらに向ける。
『メンバーの誰が好きかって事もわかるのか?』
「ううん、それはよくわかんない」
『え……?』
誰の事が好きなのかはよくわかんない?どういう事だ?
とりあえず、麻友さん自身は俺が麻友さんの事が好きだという事はわかってないって事か。
『気にならないのか?誰の事が好きなのか』
「気にならないって言ったらウソになるけど、雄作くんもあんまり言いたくないでしょ?」
『まあ、確かに……』
「だから今は聞かない。でも、言いたくなったらいつでもいいから教えてね」
そう言うと麻友さんは久しぶりの笑顔を見せた。
『あ……ああ』
俺がうなずくのを見ると、麻友さんは「さてと」と言って、席を立った。
「そろそろここ出よ。きっと麻里子さまも心配してるだろうし」
『や、あんま心配してはないと思うよ。うん』
つかむしろ、帰って来ないんじゃねーかって思ってるんじゃないかな。
俺はそう思いながらも、二人で店を出た。
「じゃあ私、こっちの方向だから」
そう言って、俺とは逆方向へ歩き出す麻友さん。
『ああ、気をつけてな』
俺が手を振ると、麻友さんは「あ、そうだ」と言って、俺の方へ戻ってきた。
「雄作くんに、一つだけいいこと教えてあげるね」
『いいこと?』
俺が聞き返すと、麻友さんは口を開いた。
「誰かは言えないけど、メンバーの中に、雄作くんの事が好きな人が一人いるからね」
それだけ言い残すと、麻友さんは「じゃあね」と言って、俺の元から離れた。