My Dream
□第八章
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「もうヤダ……私……帰りたい……」
部屋に戻ったゆきりんは、ベッドに倒れこみ、枕に顔をうずめながら言った。
「ちょ、ゆきりん、まだ100%そうとわかった訳じゃないんだから、そんな落ち込まないでよ」
まあ確かに、出鼻をくじかれた形にはなるけど…。
「おーい、どしたー、りんちゃーん」
そんな中、ゆきりんと同部屋である宮澤佐江ちゃんがのぞきこんで言った。
「今、ゆきりんは、佐江ちゃんには到底わからないであろう悩みをかかえてるの。だからそっとしといてあげてね。わかった?」
「いや、わかったけどさまゆゆ…、言い方が…」
「じゃ、よろしくね」
そう佐江ちゃんに言い置いて、私は部屋を出た。
* * *
『……うん、じゃあまた。時間があったら会おうな』
俺はそう話してから、電話をきった。
さて、部屋に戻るかな…。
そう思って振り向くと、そこには前田さんがいた。
『あ、前田さん。どうもお久し振りです』
「久し振り、雄作くん。それより今誰と話してたの?」
『誰って、俺の友達ですけど…』
「またまたぁ〜、友達とか言っちゃってぇ〜。ほんとは女の子とかなんじゃないの?」
ニヤニヤしながら聞いてくる前田さん。
『いや、ほんとに友達ですって。それに男ですし』
「ほんとにぃ〜?」
『ほんとにほんとですって』
前田さんは、しばらく俺をじっと見てから、やがて口を開いた。
「よし、そんなに言うんなら今日のところはこの辺で許してあげよう」
『いや、なんですか?許すって…』
「じゃあ、私は用があるから失礼するね」
勘違いするだけしといて結局「許す」ってほんとに失礼ですよ。
そう思いながら、去っていく前田さんに手を振った。
さて、部屋戻ろ。
俺が歩き出そうとすると、またも俺を呼ぶ声がした。
「杉原ー」
『おお、佐藤か』
「なにしてんの?こんな所で」
『いや、ちょっと電話しててな。そういうお前は?』
「私は、今部屋に誰もいないからこうやってふらふらしてるだけなんだけどさ」
『なんだ?お前の同部屋のメンバーはどっか行っちゃったのか?』
「うん、そうなんだよね」
『そうか、かわいそうに……』
「いや、なにその哀れな物を見る目は?てか、別にハブられてる訳じゃないからね」